パナソニックHDとNKRCは、サーキュラーエコノミーの取り組みとして、ガラス扉冷蔵庫のリサイクル工程において、ガラス扉からガラス板をレーザー光で剥離する装置を開発した。
パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)と西日本家電リサイクル(NKRC)は2025年6月4日、サーキュラーエコノミーの取り組みとして、ガラス扉冷蔵庫のリサイクル工程において、ガラス扉からガラス板をレーザー光で剥離する装置を開発したと発表した。
家電メーカー各社は2008年以降、デザイン性が高く、扉素材が劣化しにくく手入れがしやすいといった理由から、冷蔵庫の扉部分にガラスを採用したモデルを発売している。特に冷蔵庫は大型機種(400l以上)の5割以上がガラス扉を搭載している。
一方、家電リサイクル法が2001年4月に施行されて以降、リサイクル工場には数多くの使用済み家電が持ち込まれている。その中でも冷蔵庫は年間約334万台が搬入されており、人手による分解と大型設備による破砕や素材の特性に合わせた専用選別装置などを組み合わせることで素材としての純度を高め、有用な資源を回収している。
しかし、冷蔵庫からガラス扉を取り外す際の問題点として「わずかな亀裂でガラス全体が粉砕」「フィルム樹脂、ウレタン、テープが取りづらい」「有機塗料とガラス板との分離はほぼできず」がある。これらの問題点があるため、ほとんどのリサイクル工場では未処理で破砕し廃棄している。一部のリサイクル工場では扉板部として回収しているが、ガラス板が扉と強力に接着されているため、それらの間にある塗料、樹脂、ウレタンを容易に取り外せず残留してしまう。
また、NKRCは、株主である東芝や東芝環境ソリューションが掲げる「東芝グループ環境未来ビジョン2050」の「資源の有効活用」を推進するために、家電リサイクルにおける廃棄物量の削減とリサイクル率の向上を目的にこれまで使用済みガラス扉付き冷蔵庫からのガラス剥離を現在まで手分解作業で行っている。
冷蔵庫のガラス扉は破砕機で処理することも可能だが、同社では廃ガラス扉冷蔵庫の処理量が増加すると破砕機に大きな負荷がかかり、損傷のリスクがあると判断し、この方法を採用してない。
NKRC 代表取締役社長の相馬孝浩氏は「当社ではガラス扉冷蔵庫からのガラス板剥離の課題として、『剥離したガラスの廃棄物処理』『剥離作業による切創などのリスク』『使用済みガラス扉冷蔵庫の増加対応』を把握している」とコメントした。
「剥離したガラスの廃棄物処理」では、手作業でガラスを剥離すると、ガラスが破損する他、有機塗膜やウレタンなどの異物を完全に除去できないため、リサイクルが難しく、最終的には廃棄物として処理される。
「剥離作業による切創などのリスク」では、従業員が作業時に適切な保護具を着用しているが、それでも切り傷などの災害リスクを完全にゼロにすることができない。
「使用済みガラス扉冷蔵庫の増加対応」に関して、現在、NKRCで処理している廃冷蔵庫のうち、ガラス扉付き冷蔵庫は全体の約3%に止まっている。しかし、メーカーの推定によると、2035年頃にはその割合が約20%にまで増加し、ピークを迎えると見込まれている。この予測に基づくと、NKRCでは年間約4万台のガラス扉冷蔵庫を処理する必要があり、現行の手作業による分解では対応が困難だ。
これらの解決策として、パナソニックHDのMI本部とNKRCはガラス扉からガラス板をレーザー光で剥離する装置を開発した。
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