冷蔵庫ガラス扉のレーザー剥離装置開発 ステージで面出し/センサーで外形検出リサイクルニュース(2/3 ページ)

» 2025年06月05日 06時45分 公開
[遠藤和宏MONOist]

従来装置の課題を解消

 パナソニックHDは2022年に発表したレーザー剥離工法用の装置を改良し新装置を開発した。

 従来装置は扉ガラス接着面の有機塗料をレーザーにより炭化させた後、吸着パッドで取り外すことによりガラス板の選択的剥離を実現する「レーザー剥離工法」を採用している。一方で、対象物の上からレーザーを照射するため毎回あらかじめガラス扉の面出し(レーザーが効果を発揮するために対象物の水平性や高さ、位置を調整する作業)が必要だった。さらに、ガラス扉の色調や光沢の違いによってセンサーが画像認識エラーを起こしサイズを正確に測れずレーザー照射範囲を規定できないケースや、レーザー照射によるウレタン燃焼のリスクがあった。

レーザー剥離工法 レーザー剥離工法[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD
従来装置の課題 従来装置の課題[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 新装置ではレーザー剥離工法を維持しつつこれらの課題を解消している。新装置は搭載されたガラスステージにガラス扉を乗せ下からレーザーを照射する構造を採用している。これにより、ガラスステージにガラス扉を乗せるだけで最適な面出しが行えるようになっている。

ガラスステージにガラス扉を乗せるだけで最適な面出しが可能に ガラスステージにガラス扉を乗せるだけで最適な面出しが可能に[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 新装置のX、Y方向にはそれぞれラインセンサーが配置されており、センサーの受光部への光のオン/オフによりガラス扉の外形を自動検出する。これにより、画像認識レスでガラス扉のサイズをセンシングしレーザーの照射範囲を規定できる。

画像認識レスでガラス扉のサイズをセンシングしレーザーの照射範囲を規定 画像認識レスでガラス扉のサイズをセンシングしレーザーの照射範囲を規定[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 加えて、窒素ガスをレーザー処理室に充填し酸素濃度を発火限界以下にしてからレーザー照射を行うことにより、ウレタンの燃焼リスクを回避している。窒素ガスの充填は必要最低限とした。パナソニックHDとNKRCは、新装置の検証で工場インフラに窒素がない場合を想定してCKD製の窒素ガス精製ユニットを活用し、レーザー処理室への窒素ガスの充填およびガラス扉へのレーザー照射を行い、安全性を確かめた。

窒素ガスをレーザー処理室に充填し酸素濃度を発火限界以下にしてからレーザー照射 窒素ガスをレーザー処理室に充填し酸素濃度を発火限界以下にしてからレーザー照射[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 新装置の本体のフットプリントは約2.5×1.5mで、電力とエアーがあれば稼働するため設置場所を選ばない。パナソニックHD MI本部 マニュファクチャリングソリューションセンター 資源技術循環課 シニアリードエンジニアの後川和也氏は「新装置は従来装置と比べて、サイズが二回り小さく、構造もシンプルとなっているため、製造コストも下がっている」と話す。

新装置の仕様 新装置の仕様[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

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