パナソニック ホールディングスは2022年11月9日、利用が広がる家電製品のガラス素材に対し、レーザー光を活用して効率的なリサイクルを可能とする工法を開発したと発表した。
パナソニック ホールディングスは2022年11月9日、利用が広がる家電製品のガラス素材に対し、レーザー光を活用して効率的なリサイクルを可能とする工法を開発したと発表した。
家電製品では、高級感のあるデザイン性を求めて、冷蔵庫の扉部分や洗濯機の蓋部分などにガラス素材を使用するケースが増えている。特に冷蔵庫では現在発売されている大型製品の多くがガラス扉を採用している。しかし、一方でこれらのガラス素材については現在はリサイクルされることなく廃棄物として処理されている。
1つの要因としては、ガラス扉などを採用した冷蔵庫がリサイクルプラントに持ち込まれるケースがまだ少ないということがあるが、今後はこうしたガラス素材を採用した機種の廃棄が増えてくることが予想され、リサイクル技術の開発が求められていた。
一方でガラス扉部分のリサイクルを行うのが難しい要因もあった。ガラス素材とその他の素材を強力に接着しているために、板部として回収することが困難である他、付着している塗料や樹脂、ウレタンなどを分離することが難しいことなどがあり、従来の工法では、効率的にリサイクルを行うことができなかった。
そこで、パナソニックではガラス板を取り外し効率的にガラス素材のリサイクルを行うために「接着部を不活化させること」を着想。2019年からガラスのリサイクルを可能とする工法の開発を進めてきた。そして今回、扉のガラスを透過するレーザー光を用いてガラス裏面の有機塗料を炭化させることで、ガラス扉冷蔵庫からガラス板のみ剥離可能にする「レーザー剥離工法」の開発に成功した。
新工法は、冷蔵庫の扉を外さずにガラス板のみを選択的に剥離できることが特徴だ。ガラスの単一素材化が簡単に実現できることに加えて、剥離したガラスが板状で付着した炭化物は容易に除去することができるため、ガラスの再利用拡大にもつなげられるという。
新工法で使うレーザーは、一般的な1064nm波長のパルスレーザー方式を採用し、200Wの出力でガラス板の剥離を実現している。また、新工法はパナソニック製品のみではなく、他社のガラス扉採用冷蔵庫などでも適用が可能だという。
パナソニック ホールディングス マニュファクチャリングイノベーション本部 マニュファクチャリングソリューションセンター 環境システム技術部 資源循環技術課 主任技師の天野智貴氏は「冷蔵庫全体でのリサイクル率は約8割程度だが、ガラス素材を採用した大型冷蔵庫のリサイクル率は7割強にとどまっていた。これを新工法により1割程度引き上げ、他の冷蔵庫と同等のリサイクル率に高められるようにする」と述べている。
今後は2022年度(2023年3月期)中に効果検証を進め、2023年度(2024年3月期)に全国のリサイクルプラントで導入を進めていく考えだ。また、対象製品の拡大にも取り組む。まずは冷蔵庫のガラス扉のリサイクルで実績を積み、その後洗濯機など他の家電製品で適用範囲を広げていく。さらに、その後は「スマートフォン端末など他のガラス使用製品のリサイクルでも適用できるか検討を進めていく」(天野氏)としている。
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