新たに導入するHeronは、量子プロセッサの性能を示すT1(エネルギー緩和時間)の中央値が300μsに達している。これは、超伝導型量子コンピュータでは世界最高だという。また、2量子ビットのエラー率は5×10−4未満となっている。IBMの既存の量子プロセッサであるEagleとの比較では、100量子ビットの長いレイヤーのエラーをベンチマークとするデバイス全体のパフォーマンスが1桁向上、2量子ビットのエラー率が3〜4倍改善、量子処理速度を示すCLOPS(Circuit Layer Operations Per Second)が60%増加するとしている。
今回の発表では、量子コンピュータのIBM Quantum System Oneと、高いAI処理性能が特徴の最新スパコンであるMiyabiとのハイブリッド利用も大きな話題となっている。
実は2025年に入り、IBMの量子コンピュータ「IBM Quantum Marrakesh」と理化学研究所のスパコン「富岳」を連携した量子とスパコンのハイブリッドシステムにより、鉄硫黄クラスター(Fe4S4)の振る舞い計算において、古典コンピュータによるCISD(電子励起配置間相互作用)の精度を上回る報告があり、これには大きな反響があった。
東京大学 理事・副学長の相原博昭氏は「そこで今回、IBM Quantum System OneとMiyabiのハイブリッド構想を立ち上げることになった」と説明する。このハイブリッド構想では、材料科学計算やAI、シミュレーションの計算能力を向上するだけでなく、AI処理性能が高いMiyabiを使ってIBM Quantum System Oneの量子回路を最適化するなどの取り組みも検討している。
さらに将来的な展望として、複数の量子コンピュータとスパコンを接続したハイブリッド演算を行うことも検討している。この構想は、IBM Quantum System OneとMiyabiに加えて、理化学研究所の理研計算科学研究センター(神戸市中央区)にある「IBM Quantum System Two」と富岳を連携させるというものだ。
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