東京大学とIBMは、日本初導入となるゲート型商用量子コンピュータ「IBM Quantum System One」が稼働を開始したと発表。設置場所は「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター」で、東京大学が設立した量子イノベーションイニシアティブ協議会に参加する慶應義塾大学や、日本IBMを含めた企業11社を中心に活用を進めることになる。
東京大学とIBMは2021年7月27日、オンラインで会見を開き、日本初導入となるゲート型商用量子コンピュータ「IBM Quantum System One(以下、System One)」が稼働を開始したと発表した。設置場所は「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター(KBIC)」(川崎市幸区)で、東京大学が設立した量子イノベーションイニシアティブ協議会(QII協議会)に参加する慶應義塾大学や、日本IBMを含めた企業11社を中心に活用を進めることになる。
会見には、東京大学 総長の藤井輝夫氏や、IBMとの協業をはじめ東京大学における量子コンピューティング関連の活動に尽力した東京大学 教授で前総長の五神真氏、IBM シニア・バイス・プレジデント、IBM Research ディレクターのダリオ・ギル(Dario Gil)氏、日本IBM 社長の山口明夫氏の他、文部科学大臣の萩生田光一氏、科学技術政策担当大臣の井上信治氏(リモート参加)、参議院議員で自由民主党 量子技術推進議員連盟 会長の林芳正氏、慶應義塾長の伊藤公平氏、川崎市長の福田紀彦氏、QII協議会 会長を務めるみずほフィナンシャルグループ 取締役会長の佐藤康博氏などが参加した。
東京大学 総長の藤井氏は「パンデミックをはじめとするさまざまな問題に対して、大学が社会に果たすべき役割は大きくなっている。大学が持つ多岐にわたる知識や知恵を編み合わせて新たな知を創出し、世界に広がるさまざまな困難を乗り越える道を見いだすことに貢献できる。量子コンピューティングは、この知に裏付けられたものであり、既知の問題を高速に解くだけでなく、未踏の問題を解決できる可能性を秘めている。その社会実装を広げていく上で重要な礎になるのが、今回稼働を開始したSystem Oneだ」と語る。また、変化の早い量子技術分野に対応する「量子ネイティブ」と呼ばれる次世代人材の育成でも新たに導入したSystem Oneなどを活用していく方針である。
QII協議会 会長の佐藤氏は「量子技術の社会実装は重要であり、国内の研究者が占有できる量子コンピュータが得られたのは良いことだ。世界が驚くようなイノベーションを発信できるように、QII協議会としても支援していきたい。また、QII協議会へのさらなら参加拡大も期待できる」と述べる。
IBMと連携して量子コンピュータの活用に先行して取り組んできた慶應義塾長の伊藤氏は「3年半前の量子コンピュータは、人間で例えればまだ赤ちゃんと言っていいようなものだった。しかし今は幼稚園児くらいまで進化しており、たいていの人間と同じことができるようになっている。これから10年後には高校生、大学生と進化し、大変なコンピュータになるだろう。われわれは、米国にある量子コンピュータを使って研究を進めてきたが、東京大学はIBMの量子コンピュータのフラグシップであるSystem Oneを日本国内に導入するという偉業を成し遂げてくれた。これにより、東京大学、慶應義塾大学、QII協議会の参加企業の研究開発活動をさらに進めることができるだろう」と強調する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.