住友林業とレンゴーがバイオエタノール生産で協業 建設現場の木くずを活用脱炭素

住友林業とレンゴーは木質由来のバイオエタノールの生産に関して基本合意書を締結した。

» 2025年04月28日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 住友林業とレンゴーは2025年4月23日、木質由来のバイオエタノールの生産に関して基本合意書を締結したと発表した。住友林業の住宅建設現場で生じる木くずなどの建築廃材を使って持続可能な航空燃料(SAF)の原料になるバイオエタノールを生産する。石油代替原料として需要が高まる木質バイオエタノールの量産技術の早期確立を目指す。

協業内容

 今後両社は協議を進め、2025年12月をめどに共同出資会社を設立する予定だ。2027年までに年間2万kLの商用生産を目指す。製造したバイオエタノールは燃料事業者へ販売し、SAFに転換され航空燃料として使用される。

 バイオエタノールの製造にはレンゴーの子会社でバイオマス化学品の研究/開発を行うBiomaterial in Tokyoの技術を用いる。製造拠点はレンゴーの子会社で包装用紙の製造や廃棄物のリサイクルをする大興製紙の本社工場(静岡県富士市)が担う。

 住友林業は静岡県周辺の自社住宅建設現場の建築廃材を集め、CORSIA認証適格原料として供給する。CORSIAはCarbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviationの略称だ。国際航空業界で温室効果ガス排出削減を目指す枠組みで、CORSIA SAFとして使用するには原料や燃料転換プロセスなど一定の要件を満たし、CORSIA適格原料として認証を取得する必要がある。

 また、住友林業は製造過程で出るリグニン成分を使って住宅用塗料などの材料の生産を検討し、木質資源を余すことなく利用するビジネスモデルを構築する。

今回のビジネスモデルのイメージ 今回のビジネスモデルのイメージ[クリックで拡大] 出所:住友林業

協業の背景

 国際航空分野では国際民間航空機関(ICAO)や国際航空業界団体(IATA)が2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を採択した。SAFは従来の石油由来ジェット燃料に比べ航空機のCO2排出量を7〜8割抑制でき、CO2排出量の削減効果が高い手段として需要が拡大している。

 一方で2050年にカーボンニュートラルを達成するには4.5億kLのSAFが必要と推計されているのに対し、2022年時点の供給量は約30万kL(必要量の0.07%)だ。日本政府も2030年から国内航空会社の使用燃料の1割をSAFに置き換える目標を掲げ、経済産業省は同年のSAFの国内需要量を172万kLと試算している。国内外でSAFの導入/普及が予想され供給量が不足する中、国産SAFの開発/製造が急務だ。

 近年は廃食油やトウモロコシ、サトウキビを原料にSAFを製造する技術が確立しているが、世界的な需要増大により原料の供給不足や食糧との競合が課題だ。食糧と競合しない木材でバイオエタノールを商用生産できれば、CO2排出量を減らせるだけでなく原料の多様化につながる。

 住友林業は木材成分のバイオマス化学品や燃料としての可能性に着目し、2024年1月に新事業開発部バイオリファイナリー推進室を発足した。植物や農作物などのバイオマスを原料に化学品や燃料を作り出す技術「バイオリファイナリー」事業の立ち上げに向けて技術開発やビジネスモデルの検証を進めている。

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