核融合エネルギー実証計画を推進する新会社 プロジェクト全体を統括製造マネジメントニュース

京都フュージョニアリングは、プロジェクトリーダーを務めるフュージョンエネルギー発電実証プロジェクト「FAST」において、プロジェクトを推進する新会社「Starlight Engine株式会社」を2025年4月3日に設立した。

» 2025年04月17日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 京都フュージョニアリングは2025年4月16日、プロジェクトリーダーを務めるフュージョンエネルギー発電実証プロジェクト「FAST(Fusion by Advanced Superconducting Tokamak)」において、プロジェクトを推進する新会社「Starlight Engine株式会社」を同月3日に設立したと発表した。フュージョンエネルギーとは、軽い原子核を高温/高圧で融合させて重い原子核に変える際に放出される「核融合エネルギー」を指す。

FASTプロジェクト全体を統括

 フュージョンエネルギーの早期実現に向けて世界中で開発競争が加速する中、2030年代の発電実証を目指す民間主導の産学連携プロジェクトとして2024年11月にFASTが始動した。

 FASTは、複数の円形コイルを一周並べた「トカマク型」の核融合炉を採用した核融合発電施設の開発を目指し、京都フュージョニアリングをプロジェクトリーダーに、日本を代表する核融合研究者や産業パートナー、国際連携パートナーが連携し、プロジェクトを推進している。

 今回、プロジェクトを一層加速させるために、FASTを推進する新会社としてStarlight Engineを設立した。Starlight Engineという社名は太陽や恒星の輝きの源がフュージョンエネルギーであることを表しており、「Starlight」と「Engine」を組み合わせて名付けた。代表者には、大手総合商社やベンチャーキャピタルを経て、現在は京都フュージョニアリングの取締役 兼 COOを務める世古圭が就任する。

 Starlight Engineは、FASTプロジェクト全体の統括を行うとともに、今後予定される技術開発やビジネス開発、資金調達、立地選定、サプライチェーン構築などを推進していく。同社は商業プラントの建設を目指し、プラント技術や統合システムを海外輸出する民間事業主体となる。なお、京都フュージョニアリングは産業パートナーの1社として、引き続きFASTプロジェクトに貢献していく。

FASTプロジェクトについて

 FASTは、2030年代のフュージョンエネルギー発電実証を行う民間主導の国内プロジェクトだ。重水素(Deuterium)と三重水素(Tritium:トリチウム)による核融合反応(D-T)による燃焼プラズマの生成/維持を行うとともに、エネルギー変換、燃料システムを一体化したフュージョンエネルギー発電システムを実証するプロジェクトだ。これにより、フュージョンエネルギーの商業化に向けて発電実証や技術的課題の解決を目指す。

 プラズマの閉じ込め方式には、最も多くの研究と実験データがあり、コスト管理と技術リスク管理が可能なトカマク型を採用している。

FASTで開発を目指すトカマク型核融合炉のイメージ FASTで開発を目指すトカマク型核融合炉のイメージ[クリックで拡大] 出所:FAST

 FASTで解決を目指す核融合炉の技術課題は以下の通りだ。「トリチウムを使用した燃焼プラズマの生成と持続、制御」「核融合反応により発生するエネルギーの取り出しと変換(発電など)と利用」「核融合反応の燃料となるトリチウムを増殖し、抽出、利用する技術の実証」「フュージョンエネルギーシステムを統合し、安全で持続的に運転するプラント技術の開発と実証」となる。

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