4つ目は、帝人ナカシマメディカルと大阪大学で開発した「高強度配向骨の誘導による積層造形整形外科デバイスの付加価値向上と製品化」だ。受賞者は、帝人ナカシマメディカル 研究部 副部長の高橋広幸氏、帝人ナカシマメディカル 取締役会長の中島義雄氏、帝人ナカシマメディカル 代表取締役社長の加藤直之氏、帝人ナカシマメディカル 代表取締役副社長の小林貴史氏、大阪大学 大学院 工学研究科 栄誉教授の中野貴由氏となる。
今回受賞した技術は、「HTS構造(Honeycomb Tree Structure)」という骨基質の配向化誘導を実現する独自の多孔体構造を採用し、金属3Dプリンタの高度な積層造形技術を駆使することで、スペーサータイプの脊椎ケージ「UNIOS PL スペーサー」を開発したものだ。3Dプリンタによる積層造形技術により、従来の工法では不可能であった革新的なHTS構造を持つ医療機器を実現することで新たな付加価値を創造したことなどが評価を受けたという。
5つ目は、パナソニックプロダクションエンジニアリングによる「低コスト/高精細OLEDディスプレイを実現する産業用インクジェット装置の開発」だ。受賞者は、パナソニックプロダクションエンジニアリング 部長の吉田英博氏、パナソニックプロダクションエンジニアリング 主幹技師の中谷修平氏、パナソニックプロダクションエンジニアリング 課長の臼井幸也氏となる。
受賞技術は、OLEDディスプレイを低コストで生産するために必要なインクジェット装置だ。微小液滴吐出技術の確立と全ノズルの目詰まりを抑制するインク循環システムの構築により、メンテナンスが少なくて済む高安定化インクジェットヘッドを実現した。大判パネル印刷において、乾燥ムラを抑制するワンパス印刷技術と表示ムラを抑制するピクセル間の印刷体積制御技術や、大型ステージでの印刷安定性を実現する吐出タイミング補正制御技術を開発し、大画面/高精細パネルのワンパス印刷を実現する量産対応型産業用インクジェット装置を実現した。
6つ目は、プロテリアルと茨城テクノスによる「連続鋳造圧延方式による高強度/高耐摩耗性を有する電車線用銅合金材料の開発」だ。受賞者はプロテリアル 電線事業部鋳造・製線技術部 技術主幹の蛭田浩義氏、プロテリアル 電線事業部鋳造・製線技術部 部長の黒田洋光氏、プロテリアル 電線事業部鋳造製造部 部長の辻隆之氏、プロテリアル 電線事業部鋳造製造部鋳造課圧延係 係長の大友守氏、茨城テクノス 製線製造部製線課製線係の高村進一氏となる。
金属材料の高強度化は、より多くの添加元素を加えることで達成される。一方、電気伝導性については、添加元素を多く含むほど低下する。そのため、強度と電気伝導はトレードオフの関係にあった。受賞した技術では、トロリ線の基本組成である銅に微量のスズとインジウムを添加することで強度を高めるとともに、スズとインジウムを銅中の酸素と反応させて酸化物を形成させ、電子の移動の阻害要因となる添加元素の銅中への溶け込みを抑えた。これにより高い電気伝導性を維持しながら、従来製品対比で強度約1.2倍、耐摩耗性能約1.4倍となるトロリ線用銅合金材料を、連続鋳造圧延設備において量産できるようになった。
大河内記念生産賞としては、日立製作所の「熟練者ノウハウを反映可能な生産計画最適化技術の開発と実用化」が選ばれた。受賞者は日立製作所となっている。
受賞技術は、日立製作所内で過去に熟練者が立案した計画履歴データの分析により熟練者のノウハウをデジタル化し、機械学習技術を組み込んで熟練者の計画を再現できる計画最適化技術だ。同技術は、「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」として外部提供なども行われている。高齢化が進む熟練者からのノウハウ伝承や、働き方改革に向けた労働時間低減などの社会課題の解決に貢献する点が評価を受けた。
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