製造業を取り巻く環境が変わる中、力量管理で扱う人材情報に注目し、戦略的な人材育成/配置や組織力強化に活用する企業が増えてきました。本連載では組織的なデータ活用による発展的な力量管理を「スキルマネジメント」と呼び、その考え方や取り組み方を解説していきます。
これまでの第1回、第2回では、スキルマネジメントとスキルの整理に関する考え方と進め方を解説してきました。
そこでまず、スキルマネジメントを「組織や従業員が持つスキルデータを継続的に収集、蓄積し、人材マネジメントに活用することで事業価値の向上、品質/生産性の改善、組織の活性化を実現すること」と定義しました。
そして、スキルマネジメントを実施するために必須となるスキルの整理について、「フォアキャスティング型」と「バックキャスティング型」の2つのアプローチがあることをお伝えしました。
今回は、スキルマネジメントの中心である「スキルデータ」の活用について解説していきます。なお、筆者が所属するスキルノートでは、「技能や知識、経験などおよそ組織や人材が持ちうる『スキル』に関する情報」を「スキルデータ」と定義しています。
さて、ここからはこのスキルデータの具体的な活用範囲やその事例、さらに、スキルデータを活用する際に気を付けたい3つの注意点をご紹介していきます。
⇒連載「ゼロから学ぶ! 製造業のスキルマネジメント」のバックナンバーはこちら
まずは、製造業におけるスキルデータの活用範囲についてご説明します。筆者は「人材マネジメント」と「生産/設計マネジメント」の2点において、スキルデータを活用できると考えています。
そもそも人材マネジメントは、企業のビジョンの達成や実現のために経営資源である「ヒト」の管理と活用をする人事戦略だと定義されています。
一般的に、製造業の事業部における人材マネジメントでは、他業界と同様、人材育成/配置を主眼に置きつつ、従業員個人の自律的なキャリア形成/モチベーション向上を目指しています。なお、人材育成/配置には、コア人材や多能工の育成、技術/技能伝承、プロジェクトアサイン、異動ローテーションなどが含まれます。
一方で、生産/設計マネジメントは、製品の品質/作業者の安全/組織の生産性の調和をより高め、QCDの維持/改善につながる活動を対象とするものと考えてよいでしょう。
このように製造業においては、「人材マネジメント」と「生産/設計マネジメント」の2つの領域においてスキルデータを活用することができます。
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