次に挙げるのは、対象人数が100人前後の自動車部品メーカーの生産技術職における事例です。この企業がスキルデータ活用を進めた背景には、「スキルの習得」に関する時代の変化があります。
20年ほど前は今よりも多くの新機種プロジェクトがあり、若手従業員もさまざまな領域を経験して幅広い領域のスキルを習得できる、あるいは特定の領域にフォーカスして専門知識/技術を深められる、そんな技術者育成の環境がありました。
しかし現在は、当時と比べて新機種のプロジェクトが少なくなったため、以前のように多様な方向性で技術者を育成することは難しい、というのが実情でした。
この結果、「人材」に関して2つの課題が生じていました。
これらの課題に対して、以下2点の改革に着手しました。
施策の結果、人材像/スキル要件を基に計画的にコア人材を育成していくための異動ローテーションが実施できるようになりました。またその結果、将来の人員計画を正確に立てることも可能になりました。
さらに、スキルデータや育成計画を基に異動ローテーションを行うことから、異動対象者も納得感を高く持った状態で教育/研修を受けることができ、異動対象者のモチベーションの維持や向上に貢献しています。
3つ目の事例は、スキルデータの活用によって、工数削減と作業者の安全対策を強化した事例です。この企業では100人ほどが在籍する部門を対象に施策を実施しました。
この企業で扱っている製品は、大量生産が不可能な「一品もの」という性質上、品質要求が非常に高い点が特徴でした。そのため、求められるスキル管理/資格管理の質もとても厳格に評価されていました。
しかし、この企業ではスキル管理/資格管理において、以下の2つの課題が生じていました。
これら2つの課題を解決するために、スキルや資格、教育記録をシステムに一元化した上で、スキルデータとMES(製造実行システム)を連携させました。
施策の結果、資格の有効期限が切れた状態で作業することを防止し、工程に必要なスキルの保有者によって作業が確実に実施される、という状態を保証できるようになりました。
また、スキルデータを管理している当社のスキル管理システムに作業の実績データを連携させることで、スキルの自動更新や鮮度管理を実現しました。この結果、スキルマップや教育記録などの作成工数も減らせました。
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