キャラクターの頭部が跳ね上がる仕組みは、スプリング(大)を利用したシンプルな物理的構造によるものになります。
頭部が胴体にセットされている状態では、内部に組み込まれているスプリング(大)は圧縮された状態で組み込まれています。圧縮されたスプリング(大)はそのままであれば、元に戻ろうとする力が働き解放されてしまいますが、ジョイントの三角形状が胴体にあるスリットにハマることで、スプリング(大)は圧縮された状態を保持できます。
なお、頭部とジョイントはボルトで固定されています。頭部とジョイントは本来一体構造でも問題ありませんが、そうなっていないのは金型で成立させるためだと思われます(詳細については割愛します)。
では、キャラクターの頭部が跳ね上がる際の動作プロセス(a~b)を確認してみましょう(図6)。
a)ハンマーがキャラクターの頭部に衝撃を与える
先ほどの「1.ハンマーを振り下ろす仕組み」で説明した通り、ボタンを押し込むことでハンマーが振り下ろされます。そして、ハンマーが相手キャラクターの頭部(セットされた状態の頭部)に当たり、衝撃を与えます。
ある程度の力が頭部に加わると、頭部は次第に胴体からズレていきます。最終的に、頭部に組み付けられたジョイントの三角形状が胴体のスリットから外れます。
b)スプリング(大)の反発力で頭部が跳ね上がる
ジョイントの三角形状が胴体のスリットから外れると、圧縮されていたスプリング(大)の復元力(元に戻ろうとする力)が働き、キャラクターの頭部を跳ね上げます。ハンマーの衝撃の強さによっては、頭部が大きく揺れたり、一時的に浮くような動きになったりすることもあります。
なお、跳ね上がった頭部については、ジョイントの三角形状を胴体のスリットにはめ込む(=スプリング(大)を圧縮した状態でセットする)ことで、すぐさま再戦可能となります。
ここまで解説した通り、ハンマーバトルゲームは物理的な仕組みを生かしたシンプルな機構が特長の玩具です。電池不要で、直感的に楽しめるのが素晴らしいですね。また、攻撃の強さやタイミングによってキャラクターの頭部の跳ね上がり方が変わるため、単純ながらも奥深い対戦を楽しめるのが魅力です。
筆者の記憶違いでなければ、今回取り上げた頭部が跳ね上がるタイプ以外にも、キャラクターの身体全体を倒す仕組みの玩具もあったような……。おそらく、そちらのタイプは倒す機構としてスプリングだけでなく、リンク機構も採用していることでしょう。もし100円均一ショップで見つけることができたら、バラして中身を確認してみたいと思います。 (次回へ続く)
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。株式会社モールドテック 代表取締役(2代目)。『作りたい』を『作れる』にする設計屋としてデザインと設計を軸に、アイデアや現品に基づくデータ製作から製造手配まで、製品開発全体のディレクションを行っている。文房具好きが高じて立ち上げた町工場参加型プロダクトブランド『factionery』では「第27回 日本文具大賞 機能部門 優秀賞」を受賞している。
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