米国でのグローバルサプライチェーン参画では、艦艇搭載レーダー「SPY-6」の構成品の供給契約を米国のRTXと締結した。また、RTXとはF-15戦闘機のレーダー修理でも三菱電機の修理能力を確認するための試験的な契約を結んでいる。三菱電機は2004年からRTXと製造委託契約を結んでおり、航空自衛隊のF-15戦闘機のレーダーをライセンス生産している。レーダーの修理も防衛省から請け負うなど実績がある。中距離空対空ミサイル「AIM-120」に関しては、国産化に向けた検討役務を日本の防衛省から受注した。
米国のトランプ政権は、日本に防衛費を増やすよう要求している。「少なくともGDP(国内総生産)の3%にすべき」という。洗井氏は「日本に対して米国の製品を買えというところまではまだ至っていないと分析している。米国のさまざまな動向をウォッチしながら今後の戦略を練っていきたい」とコメントした。
海外事業の比率は現状ではまだ大きな水準ではないとしている。2030年時点でも開発途上となるものが多く、売り上げへの貢献には時間がかかるが、「防衛システム事業のグローバル展開が1つの大きな柱になるよう目指していく」(三菱電機 常務執行役 防衛・宇宙システム事業本部長の佐藤智典氏)
防衛関連を手掛ける企業への投資を控える動きもある。ダイキン工業は投資家からの圧力を受けて、白リン発煙弾の製造から撤退すると報じられている。白リン発煙弾は煙幕を張るなどの用途で、国際的に禁止されているわけではないが、人にやけどを負わせる可能性があるとして人道面で問題視する投資家が出てきた。
こうした動きに対し、佐藤氏は「さまざまな意見があることは理解している。われわれの防衛事業は、日本とアジア地域の安全保障を担っていくが、単なる装備品の提供だけでなく抑止力という価値も提供していく。安心安全な社会の実現に非常に貢献する事業だと考えている。どのような事業をやっているのか、しっかりと発信し、理解を得るということもこれまで以上に取り組んでいく」とコメントした。
説明会では、原価に基づいて価格が計算される装備品を扱う防衛事業で「営業利益率」を確保することにも質問の声が上がった。
佐藤氏は防衛産業の利益率の低さについて説明した。「防衛産業全般で、製造業の平均的な利益率を非常に大きく下回ってきた実情がある。三菱電機としても他の民生の事業に比べて利益率は低水準だった。防衛産業が量産効果によって利益を得られない構造であることがその要因だ。ただ、昨今の経済安全保障の状況を踏まえて、防衛産業も重要な基盤だと位置付けられてきた。防衛産業もしっかりと利益を得られるように契約制度の改定が行われた結果、従来に比べて適正な利益を得られるようになってきたと受け止めている」(佐藤氏)
2030年度に営業利益率10%以上という目標は、「さまざまな産業に比べて突出して高いわけではなく、安全保障で担う役割を考えると適正な範囲ではないか。税金を使う事業である以上、コストを削減して税金を大切に使っていく姿勢は非常に大切だ。防衛システム事業の規模が拡大し、生産量も増えていく。効率的なモノづくりを進めており、その活動の中でコストも抑えていきたい」(佐藤氏)
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