NTTの宇宙事業は2033年度に売上高1000億円を目指す、衛星とHAPSも“自前化”宇宙開発(1/2 ページ)

日本電信電話(NTT)は、同社の宇宙事業を新たなブランド名「NTT C89」の下で展開することや、その一環となるHAPS(高高度プラットフォーム)の商用化に向けてフランスのエアバス、同社傘下のAALTO HAPSと業務提携することについて発表した。

» 2024年06月04日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 日本電信電話(以下、NTT)は2024年6月3日、東京都内で会見を開き、同社の宇宙事業を新たなブランド名「NTT C89」の下で展開することや、その一環となるHAPS(高高度プラットフォーム)の商用化に向けてフランスのエアバス(Airbus)、同社傘下のAALTO HAPS(以下、AALTO)と業務提携することについて発表した。NTT 代表取締役社長の島田明氏は「現在、NTTの宇宙ビジネスの売上高規模は数十億円程度だが、10年後の2033年度には1000億円まで伸ばしたい」と目標を掲げた。

NTT 代表取締役社長の島田明氏(左)と同社 取締役 執行役員 研究開発マーケティング本部 アライアンス部門長の工藤晶子氏(右)。2人の間にあるのが宇宙事業の新たなブランド名「NTT C89」のロゴ NTT 代表取締役社長の島田明氏(左)と同社 取締役 執行役員 研究開発マーケティング本部 アライアンス部門長の工藤晶子氏(右)。2人の間にあるのが宇宙事業の新たなブランド名「NTT C89」のロゴ[クリックで拡大]

 NTTは2021年にスカパーJSATと共同で、成層圏で運用するHAPS、GEO(静止軌道)衛星、LEO(低軌道)衛星を統合して、それらと地上を光無線通信ネットワークで結び、分散コンピューティングによってさまざまなデータ処理を高度化する宇宙の新たなICTインフラ基盤構築として宇宙統合コンピューティングネットワークを発表している。今回発表した、宇宙ビジネスのブラン名であるNTT C89では、GEO衛星、観測LEO衛星とデータプラットフォーム、HAPSの3領域は、自社の技術的な強みを生かしての“自前化”を目指す一方で、既に協業を発表しているAmazon Project KuiperやStarlinkなどが先行する通信LEO衛星についてはパートナー連携でサービス化の加速を目指す領域に位置付けている。

宇宙統合コンピューティングネットワークにおいて4つの領域で事業を展開する 宇宙統合コンピューティングネットワークにおいて4つの領域で事業を展開する[クリックで拡大] 出所:NTT

 なお、NTT C89(エヌ・ティ・ティ シー・エイティ・ナイン)は、NTTグループ各社などの宇宙分野における事業、サービス、研究開発などの取り組みを「星」と定義し、それぞれを有機的につなげていくことで「新たに89個目の星座を作っていく」という思いを表しているという。島田氏は「宇宙はより身近になり月利用や民間ステーションなどへの注目も集まっている。NTTとしても新たな可能性を模索すべく、その思いを込めてNTT C89を立ち上げることを決めた。現在、世界に星座は88ある。NTTグループの1つ1つの取り組みは1個の星にすぎないがそれらを有機的につなげて89番目の新しい星座を生み出し、日本の宇宙産業促進に貢献したい」と意気込む。

89番目の星座を目指すNTT C89のイメージ 89番目の星座を目指すNTT C89のイメージ[クリックで拡大] 出所:NTT

 GEO衛星では、衛星通信サービスの「ワイドスター」をサービス提供中だが、スカパーJSATとの合弁企業であるSpace Compassが観測衛星向けの高速通信サービスとして光データリレーサービスの事業化を進めている。技術開発では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と取り組んでいる宇宙データセンターに向けたAI(人工知能)推論技術の他、宇宙太陽光発電や宇宙放射線バリアなどもテーマになっている。

GEO衛星の領域での取り組み GEO衛星の領域での取り組み[クリックで拡大] 出所:NTT

 観測LEO衛星とデータプラットフォームでは、他社の観測衛星を用いて取得したデータを基に行っているデジタル3D地図サービスの「AW3D」を提供済みだが、今後は自社で観測衛星コンステレーションを展開して観測衛星サービスを事業化するとともに、その観測衛星サービスのデータなどを用いたAW3Dとシミュレーションを組み合わせたデジタルツインに基づく観測データプラットフォームサービスも提供していく方針だ。技術開発では、JAXAと進めている衛星MIMO(Multi-Input Multi-Output)や次世代地球観測技術がテーマになる。

観測LEO衛星とデータプラットフォームの領域での取り組み 観測LEO衛星とデータプラットフォームの領域での取り組み[クリックで拡大] 出所:NTT

 通信LEO衛星については外部パートナーとの連携が主軸になる。既にサービスを提供しているStarlink Businessに加えて、AWSとの間で戦略的協業を発表したAmazon Project Kuiperの取り組みを進める。「2024年度内に実証実験を始め、できれば2026年内にサービス提供できればと考えている」(NTT 取締役 執行役員 研究開発マーケティング本部 アライアンス部門長の工藤晶子氏)。技術開発では、JAXAとの超高速大容量の光通信技術、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)との衛星コンステレーション基盤技術がテーマになるという。

通信LEO衛星の領域での取り組み 通信LEO衛星の領域での取り組み[クリックで拡大] 出所:NTT
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