三菱電機の防衛事業は情報戦にも対応、海外との共同開発も強化製造マネジメントニュース(3/4 ページ)

» 2025年03月13日 08時30分 公開
[齊藤由希MONOist]

情報戦や心理戦への対抗策も

 三菱電機のさらなる成長に向けた戦略を担うのが、衛星観測ソリューションサービスと、認知領域戦支援システムだ。従来の製造ビジネスからサービス提供型ビジネスに移行する衛星観測ソリューションサービスは、小型レーダー衛星を開発、運用し衛星データに基づくソリューションを提供するSynspectiveと連携した画像サービスの提供や、データ分析に基づく将来予測の提供などを行う。

衛星観測ソリューションサービスと認知領域戦支援システム[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 認知領域戦支援システムは、武力攻撃の対象となる物理領域やハッキングを受けるサイバー領域とは異なり、情報戦や心理戦などの認知領域を対象としている。コグニティブリサーチラボとの共同開発だ。

 同領域では、情報やフェイクニュース、挑発行動などの攻撃情報をビッグデータとして集約し、AI(人工知能)によって解析や状況把握を支援する。具体的には、人々の思考や認識への攻撃を把握したり、SNSなどの情報から国内外の攻撃や思考を数値化したりする。また、国内外の思考を改善させる行動案を根拠をもって提示する。生成AIや脳科学、認知科学に関する三菱電機の知見も生かす。

 三菱電機 執行役員 防衛・宇宙システム事業本部 副事業本部長兼防衛システム事業部長の洗井昌彦氏は「認知領域戦は平時から行われるため、今後ますます重要になると見込んでいる。情報戦や心理戦では、ニセ情報やフェイクニュース、挑発行動などが流れる。ビッグデータ解析でまずは真偽を確認する。意図的なニセ情報やフェイクニュースであれば目的を解析していく。そして、影響がどの程度か判定し、どのようなアクションがよいかレコメンドを出していく。アクションの結果がどう影響するかを含めて、1つのシステムで分析することを目指している」と説明した。

防衛システム事業の海外展開

 三菱電機は、防衛装備移転三原則に基づいて事業をグローバル展開する。東南アジア諸国向けの完成品装備移転では、フィリピン空軍向け警戒管制レーダーなどの実績があり、日本の抑止力向上にもつなげている。

防衛システム事業のグローバル展開[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 欧州や豪州、インドなどとの国際共同開発では、開発コストや技術リスクを分担することで効率的に競争力のある装備品を開発する。その例が、日英伊共同開発の次期戦闘機事業だ。

 同事業では、航空機搭載電子機器の開発「ミッションアビオニクス」を担当しており、高度なネットワーク戦闘やセンシング技術、ステルス性が求められる次期戦闘機向けの技術開発に取り組む。三菱電機は、F-2戦闘機のレーダーなどの開発実績や先端技術の適用によるセンシングの向上に貢献することを目指す。また、各アビオニクスのセンサー情報を統合して複数の僚機間も含めたネットワーク戦闘を実現することなどがテーマとなる。

 インドも自国で防衛産業を育成する動きがあり、欧州も「独自でなんとかやっていかなければならないという機運が生まれつつある」(洗井氏)。その中で、欧州やインドとの共同開発の重要性が高まるとしている。「防衛予算に限りがあったり、システムが大規模化してやりきれなかったりといった状況もある。互いの技術力を見極めながら、技術力のある分野は協力して、互いに総合的に抑止力を高めていくところにわれわれも入っていきたい」(洗井氏)

国際共同開発の取り組み[クリックで拡大] 出所:三菱電機

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