大阪公立大学は、流体の動きをAIで予測計算する新モデルを発表した。新モデルは、従来流体計算に使われてきた粒子法と同程度の精度を維持しながら、計算にかかる時間を約45分から約3分に短縮できる。
大阪公立大学は2025年2月5日、流体の動きをAI(人工知能)で予測計算する新モデルを発表した。
効率的な海上発電などのために波や潮流の動きを計算する「粒子法」は、計算コストが高い。近年はAIに計算前後の流体の状態を学習させて高速計算する「代理モデル」の研究が進んでいるが、計算結果の精度や汎用(はんよう)性については、十分な検証がなされていなかった。
今回の研究では、「グラフニューラルネットワーク」と呼ばれる深層学習技術を用いて、粒子法の代理モデルを開発した。
はじめに、さまざまな条件で学習させた代理モデルを比較して、精度の高い流体計算に重要な条件を検討した。次に、流体計算の時間刻み幅を変える検証により、学習もとである粒子法と、開発した代理モデルの時間刻み幅ごとの誤差を調べた。その結果、時間刻み幅を10〜20倍程度まで大きくしても計算精度が保たれること、時間刻み幅が50倍以上になると誤差が大きくなって計算精度が大幅に下がることが分かった。
これらの結果から、粒子法では約45分かかる計算が代理モデルでは約3分(同一CPU使用時)で済むこと、画像や映像の高速処理に特化したGPUを使用した場合は約5秒に短縮できることが示された。なお、今回開発した代理モデルは、学習時には経験していない多様な流体現象も汎用的に計算できる。
流体計算の速度と精度が向上することで、海洋発電設備に加え、船舶などの設計サイクルを大幅に早められる。また、海洋構造物に対する流体の挙動をリアルタイムで把握することで、発電効率の最大化や安全性の確認などへの応用が期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.