マリン事業は売上高が前年比1.8%減の5377億円、営業利益は同15.7%減の878億円だった。船外機は、主な市場である米国で高い金利水準が続いたことや物価上昇の影響で需要が減少。ヤマハ発動機の販売としては、新モデルは好調だったが全体としては減少した。ウオータービークルは金利上昇を懸念した買い控えで需要が減少したものの、ヤマハ発動機としては部品不足やサプライチェーンの混乱による供給制約が改善されて販売が増加した。
ロボティクス事業は、売上高が前年比11.4%増の1133億円、営業損益が30億円の赤字(前年は7億円の黒字)となった。サーフェスマウンター(表面実装機)は先進国での販売が減少したが、中国などアジアで増加し全体としてはプラスだった。産業用ロボットは、販売が増加したがモデルミックスが悪化。後工程向けの半導体製造装置は生成AIや先端パッケージ向けの需要により販売が増加した。ロボティクス事業全体としては増収だったものの、製造経費や開発費など販管費の増加により営業損益が悪化した。
2025年12月期(2025年1~12月)の通期業績見通しは、売上高が前年比4.8%増の2兆7000億円、営業利益が同26.7%増の2300億円、当期純利益が同29.5%増の1400億円を計画している。前年に発生した一過性の費用がなくなるため営業利益が増加する。想定為替レートは1ドル=145円(前年比7円の円高)、1ユーロ=155円(同9円の円高)に設定した。
MC(二輪車)事業、マリン事業、ロボティクス事業は増収増益、OLV事業は増収だが営業赤字、SPV事業は減収かつ赤字を見込む。
新興国の二輪車需要が堅調に推移する他、船外機の需要が緩やかに回復すると見込んでいる。船外機の在庫水準も改善し、生産から販売までの流れが正常化する見通しだという。ロボティクス事業も、生成AI関連の需要や中国のマウンター市場回復を織り込んでいる。
一方で、アルミなど資材価格の高騰に加えて人件費やエネルギーコストの継続的な上昇が予想されるため、コストダウンや生産性の向上によって対応していく。SPV事業やRV事業は収益性改善に向けた構造改革を推進する。
ヤマハ発動機では、2024年9月末で日高祥博氏が代表取締役社長 社長執行役員を辞任した後、代表取締役会長の渡部克明氏が社長も兼務してきた。また、取締役 上席執行役員だった設楽元文氏が同年10月から代表取締役 副社長執行役員を務めている。
2025年2月12日開催の取締役会で代表取締役の異動を決定し、渡部氏は代表権のない取締役会長に、設楽氏が代表取締役社長 社長執行役員 CEOに就くことを発表した。
渡部氏は設楽氏について「業務経験の幅広さと、ヤマハファンであることがポイントだった」と紹介した。
設楽氏は二輪車のルートセールスから商品企画を担当。カスタマイズのトレンドを取り込んだ商品を手掛け、テレビドラマでも話題になりブームに発展させたという。全社のブランド推進や、マリン事業にも携わってきた。2018年からはインドのグループ会社で社長を務め、「インドの二輪車事業強化に貢献した」(渡部氏)
設楽氏は「エネルギーマネジメントや知能化、ソフトウェアサービスによってヤマハらしいイノベーションを目指したい。ファンの一人として、オフの時間を大切にしながら製品に触れて真剣に遊ぶことが重要だ。ニーズを捉えて説得力を持って企業の価値やライフスタイルを発信することにつながっていく」とコメントした。
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