配線工事や既存ネットワークの調整、設定変更を行うとともに、通信範囲が設計通りになるように基地局やアクセスポイントを決定した位置に適切に設置します。また、配線や電源の確保、設置時の安全性を確保するための事前準備が重要です。
なお、高所作業は高所作業の有資格者、免許を要する通信規格のアンテナの設置は免許人が作業を行う必要がある点に留意してください。
設置が完了した機器が設計通りに機能しているかを確認します。電波受信状況、電波干渉の発生状況、通信速度、アプリケーションの動作、ネットワークトラフィックなどを確認し、問題が発生していないか、設計仕様を満たしているかを確認します。
問題があった場合は、発生要因の切り分けを行い、アプリケーションによるものか、機器やネットワークによるものか、無線通信によるものかを確認します。無線通信に問題があった場合は、設定の変更、設置場所の調整、反射板や中継器の設置など、必要な対応を行います。
運用/保守にあたっては、本番稼働前に、運用/保守体制、障害発生時の対応方針といった管理体制を事前に定めておくことが必要です。これにより異常が検知された場合に迅速な対応が取れるようになります。
また、設置した無線通信機器は管理表に設置場所、機器名、設置時期、使用周波数帯/チャネル、使用時間帯などを記録します。これにより、新規の無線の設置時に役立つだけでなく、他の無線通信機器に異常が確認された場合に迅速・適切な対処ができるようになります。
製造現場で無線通信技術を活用するためには、電波伝搬特性を理解した上での設備構築が必要です。自社の課題や現場環境を明確にし、必要となるデータ量、通信速度などを考慮して、適切な通信方式を選択することが重要です。
NEDOでは、これら無線通信技術導入に伴う製造現場特有の課題を解決するために、「製造現場における無線通信技術の導入ガイドライン」を作成しました。5Gなどの無線通信技術を製造現場で本格活用するための具体的な課題の把握と体系化を実施し、無線通信技術の普及のためのガイドラインをまとめることで、製造現場での5Gなど無線通信技術の活用、社会実装の促進を目指しています。
今後の技術動向や無線通信関連機器の普及、各種制度の拡充などを踏まえた上で、本ガイドラインも参照いただき、自社に最適な無線通信技術の導入検討にお役立ていただければ幸いです。
一方、無線通信技術の本格導入を行っている実際の製造現場では、無線通信機器の増加による干渉という新たな課題が発生しています。
実工場では用途ごとに異なるベンダーの無線通信機器を使用することが多々あります。異なるベンダーの無線システムが混在し同一空間に集まった際に、通信の信頼性を確保するための周波数利用の最適化手法がベンダーごとに異なり、周波数利用の均衡が崩れうまく動作しない場合があります。
特に、5Gは基地局の設定、調整方法が一般に公開されていないことに加え、不具合原因を特定する有効なツールが十分に整備されていないため、ユーザーは機器の性能を十分に活かす事ができない場合があります。
今後、製造現場で無線通信機器が増加するに従い、この問題はますます顕著になることが懸念されます。この問題を解決するためには、製造現場ごとの無線通信状態を把握し、無線通信機器ごとに適切なパラメーター設定を行う必要があり、新たなツールの整備のみならず、標準化や無線通信機器の改善も必要となってくると予想されます。
NEDOでは、今後期待されるBeyond 5G、6Gでの低遅延化、大容量化の性能を十分に引き出すためにも、この問題は早急に解決すべきものであると考え、解決に向けた検討を行っていますので、今後の活動にもご期待ください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.