無線通信技術を円滑に導入するためには、適切な体制の構築が重要です。プロジェクトに関与する社内外の関係者の役割を明確化し、それぞれの責任範囲を整理します。
例えば、現場のオペレーション担当者が実際の通信環境の運用や保守を担当し、IT部門が通信システムの設定やトラブル対応を担当するといった役割分担が考えられます。一方で、ローカル5Gや最新の通信技術を導入する場合には、外部の専門家やベンダーとの連携も欠かせません。特に大型のプロジェクトは、このような体制を事前に検討しておくことが必要です。
体制が整備されることで、導入プロセス全体をスムーズに進めることが可能になります。同時に、トラブルが発生した際にも迅速な対応ができるようになり、プロジェクトの安定性が確保されます。
無線通信機器は、用途や環境に合わせて適切に選定し、導入/運用を行うことが必要ですが、そのためには、ベンダーの協力を得ることが重要になります。理想的には複数のベンダーから提案を受け、技術力、費用、納期、サポート体制などを総合的に検討することが推奨されます。
例えば、ローカル5Gの導入を検討する際には、免許申請や基地局設置に関する豊富な知識と経験を持つベンダーに相談することが望ましいでしょう。
さらに、工場の特性に適した機器やシステムを提供できるベンダーを選ぶことも重要です。また、導入後の運用サポート体制が整備されているかを確認し、将来的な保守やトラブル対応も見据えてベンダーを選ぶ必要があります。
なお、機器については、通信性能だけでなく、現場の温湿度や振動への耐久性、セキュリティ機能も選定時に考慮すべきポイントになります。
このように、用途と工場環境に適合した機器や信頼できるベンダーを選定することで、運用開始後のスムーズな稼働につながります。
これまで検討してきた内容を基に、導入計画を作成します。計画には、目的や用途、システムの要件、構成、通信規格、導入効果、スケジュール、作業手順、予算、体制といった項目を明記します。また、スケジュールに関しては、機器調達や免許申請に必要な期間を考慮し、作業が計画通り進行するように十分に検討しておく必要があります。
設計/設定フェーズを円滑に進めるためには、既存のネットワーク構成やスペックを詳細に確認し、製造現場における電波の伝搬特性や障害物の配置、工場内の稼働状況を考慮し、基地局やアクセスポイントの仮配置を行い、電波状況の詳細調査(サイトサーベイ)を実施することが重要です。
サイトサーベイは可能な限り、工場が稼働している状態で一定期間行うことが望ましいです。また、免許不要周波数帯を利用する無線通信の場合には、評価版の機器などを用い、仮配置した場所で問題なく通信が可能かを1週間程度確認する方法も効果的です。
これらの調査結果を基に、無線通信ネットワークの設計を行います。具体的には、無線通信機器の機器数や配置、パラメーターなどの設定を決めます。
ローカル5Gなどの免許が必要な無線通信を導入する場合、無線局免許を取得する必要があります。免許の取得においては、無線局の配置計画や周波数帯の利用目的、工事内容などを記載した免許申請書類を総務省地方総合通信局に提出し、免許状の交付を受けます。
ただし、申請手続きと審査には一定の期間がかかるため、計画的な対応が重要です。なお、申請プロセスにおいて、工事設計書の作成のほか、他の無線局との干渉調整などがあるため、ベンダーの協力を得ることを勧めます。
設計で定義された要件に基づき、無線通信機器を調達します。この段階では、調達スケジュールを考慮し、納品の遅延がプロジェクト全体に影響を及ぼさないよう管理します。調達した機器には、設計時に定義した設定を反映させ、通信テストを行います。
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