成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第8回では、製造現場で広がる無線通信活用の課題と生かし方について解説します。
スマートファクトリー化は製造業にとって大きな関心事であるにもかかわらず、なかなか成果が出ないという課題を抱えています。本連載では、スマートファクトリーでなかなか成果が出ないために活動を縮小する動きに危機感を持ち、より多くの製造業が成果を得られるように、考え方を整理し分かりやすく紹介します。第8回となる今回は、スマートファクトリー化で注目度が増している無線通信への期待と課題について取り上げたいと思います。
本連載は「いまさら聞けないスマートファクトリー」とし、スマートファクトリーで成果がなかなか出ない要因を解き明かし、少しでも多くの製造業がスマートファクトリー化で成果が出せるように、考え方や情報を整理してお伝えする場としたいと考えています。単純に解説するだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じてご紹介します。
従業員300人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「第4次産業革命を進める」と指示され途方に暮れます。そこで、第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺い、さまざまな課題をクリアしていきます。
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、どっぷりのめり込む。最近閉塞感にさいなまれている。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。インダストリー4.0などを中心に製造業のデジタル化についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
さて、前回のおさらいです。第7回の「なぜ製造現場のAI活用がうまくいかないのか」では、製造現場でのAI活用において難しい点と使いどころについて解説しました。
難しさの1つとしてあるのが「費用対効果」でした。
品質検査や、装置の予兆保全で、AIを活用した自動化の仕組みを検討しているんですが、費用対効果が得られる感じにならなくて悩んでいるんです。
そして、もう1つが「学習」を基軸とするAIモデルが「枠組みの変化」に対応できないという課題があるとしていました。
設備の経年劣化のように長い期間でなくても、量産を続けていれば徐々に変わっているということは起こりがちだと思うの。こうした変化にAIモデルは対応できずに徐々に精度が落ちるということが起こるわ。
これらの「変化」と「費用対効果」という2つのポイントを満たせないのに適用を進めてしまうと、AI活用で成果が生み出せず「失敗」してしまうことが起こり得ます。これらを解決するには、枠組みが変化しない固定化したポイントでAIを適用し、その費用対効果を検証するということでしたね。
枠組みそのものが変化しない部分で使うという意味ね。例えば、シンプルなものだと品質データや装置の電流値をグラフ化して、その形状から異常状態を見つける場合なんかが考えられるわね。これらを組み合わせるケースも多いわね。
さて、今回はスマートファクトリー化で注目を増す、工場内の無線通信の現状と課題について解説していきます。
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