工場向けネットワークだと、ローカル5Gも騒がれていますが、どう捉えればいいんでしょうか。
さっき説明した通り、ローカル5Gは免許型の無線通信技術になるので、1つの工場で導入するにはそれなりの負担になるわね。費用も相当なものになるわ。
まだ早いという感じでしょうか。
これもさっき言った通りで考え方によるのよ。5Gの利点は、高速大容量通信、低遅延、多拠点接続などがあるといわれているけど、その利点を生かさなければできないことがあるのであれば、早めに実証を進めた方がいいかもしれないわ。
例えば、どういうパターンがあるのでしょうか。
まずは、工場の敷地が広すぎて、全域に有線ネットワークを引くことが難しい場合ね。大規模プラントだと有線ケーブル引くだけで20〜30億円かかるケースもあると聞くわ。そういう場合であれば、ローカル5Gで基地局設置するだけで通信環境を整えられるということはコスト面でメリットが生まれるわね。
うちの工場は、そんなに広くないけれど、考え方は分かりました。その他ではどういう場面がありますか。
あとは、多数の移動体から情報を取得したり、制御したりする場面かしら。工場内で何百台もAGVを動かす場合とかね。将来的にそういうビジョンがある場合にローカル5Gも合わせて検討する流れだと思うわ。
そこは確かにそうですね。うちもAGV使っていますがそこは無線が必須だと分かります。他のパターンもありますか。
そうね。5Gの大容量通信を生かして映像を無線活用するという場面かしら。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などを活用した作業支援なんかが考えられるわね。
確かにそうですね。映像の検討も今進めているので、ネットワークも考えないとだめですね。ローカル5Gも含めてあらためて「工場ネットワークの在り方」を考えてみます。
頑張ってね。
ローカル5Gは、工場内でのネットワーク問題を全て解決する救世主のように捉えられている面もありますが、現状だけを切り取れば、費用対効果に折り合う環境は先ほどの「大規模な敷地面積の工場」などを除くと限られています。また、5Gの「低遅延性」についても、工場内作業で求められる「低遅延性」のレベルとは異なり、ゆらぎによって同期性も保てないため、ローカル5G経由で現場の製造装置の制御を行うということも現実的には難しいわけです。
ただ、こうした限界を捉えた上で、ローカル5Gでしか実現できないことも数多くあります。さらに5Gそのものが同期性能を高めるなど技術革新を進めており、できることは増え、費用も下がってくることが見込まれます。こうした動きを見定めつつ、どの領域でどういうロードマップで活用するのかを描きながら、適用を進めることが現実的だと考えています。
さて今回は製造現場における無線通信への期待と課題について解説してきました。次回も、製造現場において失敗するパターンや見過ごされがちなポイントについてさらに掘り下げたいと考えています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.