――今後、テミル:ラボはどのような展望を描いていますか?
伊藤氏 テミル・ラボの卒業生によるネットワークを強化したいと思っています。現場のスマート化について卒業生からの相談に乗ることが多いのですが、卒業生同士で知見を共有し、コミュニケーションが取れる体制を作りたいですね。テミル・ラボがハブとなり参考になる人や事例を紹介し合う。これによってDXが加速していくことに期待しています。
梶原氏 ネットワークという意味では、海外の生産現場ともテミル:ラボを通じてつながりたいですね。私は以前、インドネシアに駐在していましたが、文化も嗜好も異なるため、日本にないユニークな発想をする人が多いのです。アイデアの可能性がさらに10倍、20倍と広がっていくだろうと期待しています。
それと、これは個人的な構想ですが、先の廉価版AGV(自動搬送機)を使ったレースやコンテストなど、遊びを通じてDXやスマートファクトリーをさらに盛り上げたいですね。もし海外のAGVとレース対決などすることがあれば、当社の技術者であれば大きな関心を持つだろうな、と思っています。
――生産現場の人たちに、いかに普段とは異なるアプローチで技術に触れる機会をつくれるかが重要なのですね。
梶原氏 そうですね。近年の生産現場は「失敗が許されない」雰囲気が強い傾向にあります。生産性向上や品質安定を追求するあまり、品質低下のリスクを生じさせ得る取り組みに対して及び腰になりがちです。それがチャレンジしづらい環境を作っている面もあります。人材配置においても人材を新しいことにチャレンジさせる余裕がなく、人材のいま持っているスキルや経験だけから配属を決定する傾向があるように思います。
だから、テミル:ラボのような、リスキリングできてチャレンジのしやすい環境が現場の外に必要なのではないでしょうか。現場の人間は、日々の作業の中で工程上の不具合や非効率を感じ、解決への道筋をなんとなく思い描いています。テミル:ラボでは、そういった現場の人間が日々思い描いていることを具体的なソリューションに落とし込むチャレンジができるように、さまざまなかたちで応援したいと考えています。
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株式会社Skillnote 社長室 マネジャー
高木孝介
新卒で大手自動車メーカーに入社し、車載用燃料電池の開発を7年間担当。
部品やコンポーネントの構想設計〜詳細設計までを一気通貫で経験しつつ、海外メーカーとの共同開発案件も担当し、20件以上の技術特許を出願。
その後、大手コンサルティングファームの製造業特化型部門において、モビリティサービスの事業企画支援に従事。日本の製造業における人材の活性化が重要と思い至り、Skillnoteに参画。
『つくる人がいきるスキルマネジメント―現場と経営をつなぎ、製造業の未来をひらくアプローチ』
いま、注目の集まる「スキルマネジメント」のノウハウを体系化した書籍を発売。労働人口の減少が続く中で企業の競争力の源泉が「人」であることが改めて注目される時代に、人が保有する「スキル」をベースとする「スキルマネジメント」の重要性を説き、事例を交えてその導入ステップを解説する一書。本書は、製造業の技術・製造部門および人事部門には、今日から踏み出す第一歩の実践的な後押しとなる。さらに、事業目標の達成に向けて人材マネジメントの課題がある、従業員の育成法やキャリア開発支援に模索を続けている、などの場面で業種業界を問わず役立つ一書となっている。(Skillnoteより)
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