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» 2022年07月29日 13時00分 公開

進むデンソー流農業改革、システム活用で生産効率高めるスマートアグリ(1/3 ページ)

デンソーが施設園芸大手浅井農園と合弁で設立したアグリッドは2022年7月12日、三重県いなべ市に所有する国内最大級のトマト農場を報道陣に公開した。農場には、デンソーの最先端の技術をはじめ、自動車産業で培ったモノづくりの考え方を随所に取り入れ、新しい農業の在り方を示そうとしている。

[長沢正博,MONOist]

 デンソーが施設園芸大手浅井農園と合弁で設立したアグリッドは2022年7月12日、三重県いなべ市に所有する国内最大級のトマト農場を報道陣に公開した。農場には、デンソーの最先端の技術をはじめ、自動車産業で培ったモノづくりの考え方を随所に取り入れ、新しい農業の在り方を示そうとしている。

通常の半分のコストで農場を建設

 農場の広さは奥行256m×幅164mの約4haで、1棟建ての施設園芸ハウスとしては日本最大級という。培地は土ではなくロックウールを用いている。2019年12月から栽培を始め、2020年3月から出荷を始めた。現在、ミニトマトの「Cherry」、中玉トマトの「Medium」、大玉トマトの「Beef」と3種類のトマトを栽培しており、大手スーパーやコンビニエンスストア向けに年間1260t(トン)出荷している。

 農場建設の際は、自動車産業で鍛えられたコスト管理能力を発揮した。通常、4haなら20億円が見込まれる建設費用を、細かく見直すことで半分の約10億円まで圧縮した。それもただコストを削減したわけではない。

 冬場に使うボイラーは、近隣にあるデンソーの工場向けに敷かれたパイプラインを活用し、重油ではなく都市ガスを使ったボイラーを採用してコストやCO2排出量を抑えた。側壁も5層のポリカーボネート材を用いて暖房費の削減につなげている。一方で、高所での危険な作業をなくすため、自動のルーフウォッシャーを設置し、天板洗浄や遮光材塗布を自動化した。適材適所ならぬ“適機適所”を進めた。

 トマトを選んだ理由については、浅井農園の主力製品がトマトであることに加え、トマトは市場外流通が大部分を占め、「施設園芸にとっては、トマトが一番収益性が高いといわれている。われわれとしても、開発を進めるにあたって最大公約数的にトマトがやりやすかった」(デンソー フードバリューチェーン事業推進部 フードバリューチェーン事業戦略室長 兼 アグリッド 取締役の清水修氏)。

広大なアグリッドの農場 奥まで見渡せない広大なアグリッドの農場[クリックして拡大]
ハイワイヤー栽培で実を付けたミニトマト[クリックして拡大]

誰もが働きやすい農場を目指して 

 従業員の登録数は108人(2022年4月時点)、高齢者や知的障がい者も働く。繁忙期には70人程が作業する。農作業は3K(キツイ、汚い、危険)のイメージを持たれがちだが、アグリッドでは誰もが働きやすい環境を目指した。

 勤務のシフトはスマートフォンから簡単に登録でき、1〜8時間まで計10パターンのシフトで隙間時間を有効に活用できるようにした。出退勤の管理には指の静脈認証を取り入れることで、カードの置き忘れなどをなくし、手ぶらで来られるようにした。

 農場に入るときには各自がタブレット端末を持ち込み、その日の作業内容を確認する。作業開始と終了もタブレット端末に入力することで、オフィスではリアルタイムで全体の進捗状況を確認できる。

作業開始をタブレット端末で操作農場の入り口に並んだタブレット端末 作業開始などをタブレット端末で操作(左)と、農場の入り口に並んだタブレット端末(右)[クリックして拡大]

 作業者が葉の異常などを見つけたら、タブレット端末で写真に撮って共有、オフィスの管理画面では農場のどこにどんな異常が出ているかを一覧できる。

「作業者は毎日のように農場に入るので、葉に元気がないなど、僕らよりもよく見ている。このシステムのおかげで栽培管理者も別の作業に集中できる。報告を受けて都度見に行っていたらそれだけで1日が終わってしまう」(清水氏)。

地域の人々の余暇時間を活用従業員の総合力でよりよい農場をつくる 地域の人々の余暇時間を活用(左)と、従業員の総合力でよりよい農場をつくる(右)[クリックして拡大]出所:デンソー
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