岡山大学らは、車両用リチウムイオン電池の負極材料として注目されるチタンニオブ酸化物について、原子配列と電気化学特性の相関を解明した。LIBの大型化や安全性向上への応用が期待される。
岡山大学は2024年12月10日、チタンニオブ酸化物(TiNb2O7:TNO)の原子配列と電気化学特性の相関を解明したと発表した。東京理科大学、名古屋工業大学、島根大学との共同研究による成果だ。
Wadsley-Roth相のTNOは、結晶中にリチウムイオンが高速で移動できる空隙があり、車両用リチウムイオン電池(LIB)の負極材料として注目されている。
今回の研究では、未処理のTNOに加え、ボールミルで粉砕して粒子サイズを小さくしたTNOと、粉砕後に650℃で熱処理を加えたTNOを調製し、原子配列の解析を実施した。その結果、結晶構造はボールミル処理で乱れるものの、熱処理により回復することが分かった。
また、電気化学特性の評価では、未処理のTNOやボールミル処理のTNOに比べ、熱処理を施したTNOは、約270mAh/gの高い初期放電容量と容量維持率を兼ね備えていることが判明した。
中性子・X線全散乱測定とトポロジー解析から、原子が構成するリングの形状がLIBの充放電時におけるリチウムイオンの移動に影響しており、ボールミル処理ではこのリングにゆがみが生じ、放電容量の低下を引き起こすと考えられる。熱処理後のTNOが示す高い放電容量は、ゆがんだリング形状が熱処理で回復したことによるものだ。
原子レベルの構造が負極特性に及ぼす影響が明らかになったことで、今後、LIBの大型化や安全性向上への応用が期待される。
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