製造業の導入事例の大きなものとしては、ドイツのシーメンスへの導入事例があるという。シーメンスではグローバルでさまざまな事業を行っている中で、業務システムが細分化し分断化が進んでいた。ただ、標準化された業務管理プロセスがなく、多国籍で行うプロジェクトの管理に問題を抱えていた。そこでWrikeを導入し、グローバル運営におけるコラボレーション基盤の構築を行ったという。現在では、20か国で1万4000人のユーザーがWrikeを利用し、250通りのワークフロー管理を行っており、生産性はトータルで10%向上したという。
また、ウェアラブル端末を展開する米国fitbitでは、製品投入プロセスの管理を行うためにWrikeを導入している。fitbitではWrike導入前は製品投入に関する明確な管理体制がなかった。Wrikeの導入を通じて、メンバーの業務状況の可視化を実現し、各作業のスピードが向上したという。また、プロジェクト管理にかかる工数を50%削減し、製品投入における工数を200時間以上削減できたとしている。
さらに、スウェーデンの家電メーカーであるElectroluxは、製品設計チームで導入し、各プロジェクトで約30%の時間の削減を実現し、さらに設計チーム全体で約50%の電子メールのやりとりを削減できたとしている。
また、日本では製品サービスの企画部門や知的財産管理、組み込みソフトウェアの管理などで導入が進んでいるという。「タスクや業務の単位で何をやるのか、誰がやるのかが一元的に把握でき、付随する情報をガントチャートなど分かりやすい形でレポートを示すことができる点が評価を受けている。人的なリソース管理などでも活躍している」と泉谷氏は日本での活用状況について説明する。
コロティッシュ氏は「製造業では商品企画や設計部門、マーケティングチームや、グローバルでの生産管理などでの導入が目立つ。部門や地域を横断して作業を進める必要がある場合などに特に力を発揮する」とWrikeの製造業での用途について語る。
製造業のモノづくりプロセスで使用するためには、CADなど各部門で使用している専用アプリケーションとの連携なども必要となるが「Wrikeでは2つの方法がある。1つはプロジェクトというセクションでファイルを添付するという一般的な方法だ。もう1つは、Wrike上でレンダリングして権限管理を行いつつ閲覧可能にするという方法だ。CADやPLMなどのアプリケーションを専門部門以外の人がそのまま扱うことは難しいケースもあるが、Wrike上で閲覧のみを可能にしてレビューなどを行うことができる。主要CADについてはインテグレーションエンジンを通じて連携できるようにしている」とコロティッシュ氏は説明する。
また、業務データの連携について2024年10月には新機能として「DataHub」を国内で発表している。DataHubは、Wrikeに企業内の全ての業務データを統合することで、最新の正確な情報に基づいたより効率的なワークフロー管理を可能にするためのデータ管理機能だ。従来のWrikeは、ワークフローの管理単位であるタスクやプロジェクトに対して動的にデータや外部システムを連携させることはできなかった。DataHubは、CSVデータの読み込みとAPI連携によって、スプレッドシートや外部システムなどに存在する分散データソースをWrikeに統合する。「製造業では部門ごとのデータのサイロ化が課題として指摘される場合も多いが、これらを解決できる。モノづくりの企画から設計、製造、販売までの一連の流れを必要なデータを伴う形でWrikeで統合管理できる」とコロティッシュ氏はその意義について述べている。
日本市場への期待について、コロティッシュ氏は「今日本の製造業では完璧な風が吹いている。それには2つの要因がある。1つは、人材不足により製造業のデジタル化や自動化への意欲が活発化している点だ。もう1つが、オペレーションのデジタル化が本格化している点だ。製造業のオペレーションは従来デジタル化が遅れていた面も多かったが、ここ最近デジタル化が加速しており、それに応じてデジタルワークマネジメントの必要性も高まっている。特に日本の製造業では組織の壁が厚くデータのサイロ化などもあると聞く。これらを突き崩す動きを支援していく」と述べている。
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