ユニチカが繊維事業から撤退、収益性の低下や原燃料/輸入材価格の高騰が影響製造マネジメントニュース

ユニチカは、構造改革の一環として祖業の繊維事業から撤退する方針を固めた。

» 2024年11月29日 05時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 ユニチカは2024年11月28日、構造改革の一環として祖業の繊維事業から撤退する方針を固めたと発表。ユニチカ、日本エステル、ユニチカスパークライトが、三菱UFJ銀行と連名で、地域経済活性化支援機構に事業再生計画を提出して、同機構から再生支援を受けることが決定したことも公表した。

 併せて、三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行といった主要な取引銀行などに300〜400億円ほどの債務放棄を要請している。これらの銀行は債権放棄に応じるために調整を進めており、債権放棄日は2026年3月下旬を予定している。

繊維事業撤退の背景

 ユニチカは1889年に尼崎紡績として創業し、1918〜1969年は大日本紡績の社名で紡績業を展開してきた。1969年には、グループ会社の日本レイヨンとの合併により総合繊維メーカーのユニチカとなった。

 同社は、成長基盤の構築に向けてこれまで複数回にわたり構造改革を行ったが、2024年3月期には、円安/原燃料価格の高騰によるコスト上昇、市況の変化に伴う需要減少の他、高分子事業では東南アジアを中心とする海外での競争激化による販売単価下落、衣料繊維におけるコモディティ化による収益低下の影響を受けて、連結決算開始以来、初めての営業赤字を計上した。また、減損の会計処理も実施したことで54億円の当期純損失を計上。2024年度は、人件費削減などの一時的な対策により営業黒字を確保できる見込みだが、実質的な収益力の回復には至っていないという。

 収益力が回復しない大きな要因として、同社は、これまでの構造改革の対象が低採算事業とノンコア事業の個別の対策にとどまり、収益性低下や硬直化したコスト構造などの潜在的な課題に対応しきれていなかった、衣料繊維やポリエステル繊維関連の各事業に抜本的な対策を行えなかったことを挙げている。

 加えて、近年、グローバルにおける社会経済情勢の変化を背景とした原燃料価格の高止まりなどによるコスト上昇、市況の変化に伴う需要の減少、東南アジアを中心とする海外市場での価格競争激化、海外も含めたマーケットの変容などが進行し、こうした課題を有する事業が引き続き営業赤字となっている。

 同社グループ収益の中核を成す高分子事業でも、ナイロンフィルムを扱う海外子会社における規模拡大により生産能力が過剰となり、コストが上昇、事業収益力の低下を招くなど新たな課題を抱え、これらの収益性改善も急務な状況となっている。

事業再生計画の概要

 事業再生計画は「構造改革による不採算事業の撤退および供給能力の適正化」「コスト削減の完遂によるローコスト運営体制の確立」「付加価値の高い製品の販売拡大」「組織運営体制の強化」を骨子としている。

 「構造改革による不採算事業の撤退および供給能力の適正化」では、現状、営業赤字の状況が継続しており、採算の改善が難しく将来にわたり確固たる事業性を確保することが困難と判断した事業について構造改革を行う。構造改革の主な対象は、衣料繊維事業、不織布事業、産業繊維事業(一部事業を除く)となる。これらの構造改革では、対象とする事業に関連するグループ内での機能やシナジー、採算性などを精査し、個別に、自家工場の生産停止、他社への事業譲渡や生産移管などの取り扱いを判断し進める。

 他社への事業譲渡や移管生産などの取り組みは、当該事業の特性や相手先との協議内容などを考慮しながら、原則として、2025年8月までの合意を目標として取り組んでいく。

 「コスト削減の完遂によるローコスト運営体制の確立」では、以下の供給能力の適正化などを行うことでコスト削減を徹底し、ローコストな運営体制の構築を目指す。

  • 同社の子会社であるエンブレムアジアにおける4号機の廃止
  • 同社の子会社で生産しているポリエステルチップの外部調達への切り替え
  • 配送ルートの見直し、発送ルールの変更、物流会社や倉庫会社との契約条件の見直しなどによる物流費の削減
  • その他業務の見直しや人件費の削減、効率改善によるオペレーションコストなどの削減

 「付加価値の高い製品の販売拡大」では、収益の核となるフィルム、樹脂の高分子事業を中心として、高付加価値品の開発と販売拡大、他社との提携や同社グループの全社横断的な取り組み推進などで事業展開力の強化を図る。

 また、これまでは同社独自の強みを生かして異方性導電膜(ACF)、ガラス繊維、ガラスビーズなどの無機系素材事業の展開を行ってきたが、今後は高成長が見込まれる市場分野に経営資源を投入し、新たな用途展開を進め、収益力を強化する。

 「組織運営体制の強化」では、事業再生計画の迅速な遂行と適切なガバナンス体制を強化するため、地域経済活性化支援機構と三菱UFJ銀行から、取締役や監査役の派遣を受け入れる。

 なお、ユニチカの取締役と監査役は、事業再生に伴う第三者割当増資の実行日に社外取締役と社外監査役を除き、原則として全員退任する予定だ。

 ユニチカは、事業再生計画の遂行により、2028年3月期に全事業で黒字化を実現し、2030年3月期に売上高約700億円の達成を目指す。同期の営業利益は約65億円までの回復を見込んでいる。

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