DICは、ユニチカと共同で、高周波領域で伝送損失を低く抑える「特殊PPS(ポリフェニレンサルファイド)フィルム」を開発した。
DICは2024年10月10日、ユニチカと共同で、高周波領域で伝送損失を低く抑える「特殊PPS(ポリフェニレンサルファイド)フィルム」を開発したと発表した。この開発品は、ミリ波などの次世代通信規格に対応したプリント配線板やミリ波レーダーなどの関連部材向けの低誘電材料だ。既に一部の電子材料メーカーで評価を受けており、製品化に向けた作り込みを進めている。
スマートフォンや小型電子機器などに使用される高周波対応のフレキシブルプリント配線板には、液晶ポリマー(LCP)と銅箔を接着したものが使用されている。LCPは銅箔との接着界面が平滑でないため、伝送損失が高くなる。一方、次世代の通信機器では、高周波領域のミリ波(30G〜300GHz)を使用するため、伝送損失を低く抑える(低誘電)素材を必要とする。
そこで両社は、DIC独自のPPS重合/コンパウンド技術と、ユニチカが保有するフィルム化技術を組み合わせた特殊PPSフィルムを共同開発した。
この特殊PPSフィルムは、PPS樹脂に由来する低吸水性、難燃性、耐薬品性を維持しつつ、高周波基板に要求される低誘電特性、寸法安定性、耐リフロー性や厚みの均一性などに優れている。特に、LCPなどの既存フィルムでは改善が難しかった高温環境下や、幅広い周波数領域(10G〜100GHz)でも安定した誘電特性を示すため、自動車用途やスマートフォンなど、さまざまな用途での展開が期待される。
また、異素材との高い接着特性を持つため、フレキシブル銅張積層板(FCCL)化においてもスパッタ/めっき法や接着剤法などの幅広い加工方法に対応する。中でも、スパッタ/めっき法で作製したFCCLは、接着界面が平滑なため、既存のLCPやフッ素樹脂フィルムなどより伝送損失を低く抑えられる。スパッタ/めっき法とは、真空スパッタリング法でニッケルや銅などの金属をフィルム表面に薄く堆積させ、導電性のシード層を形成後、電気めっきで必要な厚さの導体層となる銅層を形成する方法を指す。
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