キヤノンITソリューションズは事業戦略説明会において、メインフレームからオープン環境へ移行するマイグレーションツールを拡充すると発表した。
キヤノンITソリューションズは2024年10月29日、同社の事業戦略説明会においてメインフレームからオープン環境へ移行するマイグレーションツールを拡充すると発表した。「マイグレーション用オンライン基盤ソフトウェア」の提供を開始し、富士通製メインフレーム向けのツール機能の拡充も行う。
マイグレーション用オンライン基盤ソフトウェアは、メインフレームが持つ専用のオンライン制御機能をオープンシステム上で代替する役割を果たす。メインフレームと同等のアプリケーションインタフェースを、メインフレームのオンラインプログラムを大きく修正することなく、オープンシステムでオンライン処理を実現できるようにする。
オンラインプログラムの多重実行制御や端末IDの管理など、オンライン実行制御のエミュレートが行える。既存のインタフェースのまま機能を実装するため、自社の開発スキルや開発生産性を維持しやすい。操作性もそのままのため、移行後の操作説明などの対応が不要になり、教育工数の削減が図れる。
マイグレーション用オンライン基盤ソフトウェアの提供価格は月額75万円(税別)から。料金にはサービスイン後の保守サポートサービスの費用も含まれる。サポート窓口によるサービスや、最新OSへの対応サポートも提供する。ユーザー要件に応じてカスタマイズが発生する場合は、別途費用が発生する。
また、富士通製メインフレーム向けのマイグレーションツールの機能拡充も行う。オープンシステムへの移行性を高めるため、オンライン処理を行うAIM(Advanced Information Manger)/DCやデータベース制御を行うAIM/DBを中心に、機能を拡充した。
データベースやオンラインインタフェースをオープン環境のCOBOL製品に変換するツールの他、オープン環境のデータベースへのアクセスモジュールの生成、また、メインフレーム向けのデータベース抽出やデータベースの定義、データロードスクリプトの生成などを行うデータベース移行ツールなどが含まれる。キヤノンITソリューションズ ビジネスソリューション統括本部 ビジネスソリューション第二開発本部 本部長の山口富氏は「富士通製のメインフレームのユーザーに、これまで以上に高品質でリスクの低いマイグレーションの選択肢が提供できるようになった」と語る。
山口氏はキヤノンITソリューションズが想定する、生成AI(人工知能)を用いたマイグレーションの将来像についても説明した。
現時点でマイグレーションの主流方式は、機械変換ツールを活用することでCOBOLからオープンCOBOL、COBOLの記法を引き継ぐJavaソース「JaBOL」に変えるというものだ。特にJaBOLではJavaエンジニアが理解しづらく、保守性に課題があることが指摘されている。
しかし、生成AIを活用すればCOBOLからプログラムの仕様書を自動作成し、それを基に「ピュアJava」を生成するリビルドがより容易に実行できるようになり得る。山口氏は「当社では、生成AI技術を大規模なシステムにどう適用していくかが1つのポイントになると考えている。プログラム単位でのドキュメント精製や確認、プロンプト修正を繰り返すのは負荷が大きいため、いかに効率よく変換し、変換品質を保持したまま一定規模の案件に対応していくかを検討する」と説明する。
これに加えて山口氏は、キヤノンITソリューションズが蓄積してきたマイグレーションの知見を用いてRAG(Retrieval-Augmented Generation)を活用し、マイグレーションの効率化とメインフレームに詳しくない若手技術者へのサポートに役立てる構想もあると語った。
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