では、ボルトの疲労破断の有無の予測をしましょう。手計算ではなく有限要素法を使います。ボルトが2本以上あるときは有限要素法しか手段がないというのが筆者の主張です。理由は後述しますが、本連載の最後にフリーソフト「LISA」を使う方法を説明しますのでご安心ください。
図7に示すT形フランジを題材にします。表2に諸元を示します。ねじ部の直径は有効径d2と谷径d3の平均値です。図8に要素分割図を示します。
パラメータ | 単位 | 値 |
---|---|---|
T形フランジのヤング率 | GPa | 200 |
ボルトのヤング率 | GPa | 200 |
ねじの呼び | − | M10 |
締め付けトルク | Nm | 78.0 |
摩擦係数 | − | 0.15 |
有効断面積 | m2 | 5.95×10-5 |
軸力 | N | 38391 |
低下後の軸力 | N | 8188 |
ボルトの疲労強度 | MPa | 65 |
表2 T形フランジの諸元 |
図9に接触要素の配置位置を示します。被締結体の接触面は摩擦あり接触として分離可能としています。
図10に境界条件を示します。表3に示すように荷重は2段階に分けて印加します。内力係数による効果をシミュレーションで再現するためには、表3の「初期締結軸力を発生させるような荷重」は必須となります。今回は熱収縮を利用しますが、ボルトプリテンション機能が利用できるソフトもあります。軸力を発生させるような荷重のかけ方は次回で詳しく説明します。T形フランジへの荷重は、荷重ステップ1で「なし」、荷重ステップ2である値を印加します。
ボルトの荷重 | T形フランジへの荷重 | |
---|---|---|
荷重ステップ1 | 初期締結軸力を発生させるような荷重 | なし |
荷重ステップ2 | 初期締結軸力を発生させるような荷重 | 印加 |
表3 荷重 |
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