金属疲労を起こした際にかかる対策コストは膨大なものになる。連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」では、CAEを正しく使いこなし、その解析結果から疲労破壊の有無を予測するアプローチを解説する。連載第15回では「ボルトの疲労強度」について取り上げる。
ボルトが疲労破断するとしたら図1に示した箇所です。そして、海外のボルトメーカーの方の話では「ボルトを曲げるような荷重が作用すると破断しやすい」とのことです。ボルトのねじ谷底は強烈な応力集中場なので、応力集中を考慮したボルトの疲労強度を求めましょう。
ボルトの締め付けトルクは、ねじ部の相当応力(応力集中を含まない公称応力です)が降伏応力の70[%]程度になるような大きさとするので、そのような荷重を与えたときのボルトの応力分布を図2に示します。ねじ山谷底には応力集中が発生していて、応力集中係数αは6[-]を超えています。
連載第8回で説明した応力集中係数αと切欠係数βの関係を図3に再掲します。合金鋼の場合、αがいくら大きくなってもβは3.4[-]くらいが上限です。引張強さがもっと大きなボルトを使うかもしれませんのでボルトのβは4[-]としましょう。
図2のねじ山谷底は、降伏応力を超えているので塑性変形します。材料を2直線近似当方硬化則として解析したものを図4に示します。応力は1300[MPa]になるのではなく250[MPa]ちょっと、つまり降伏応力+α程度ですね。
ねじ山の谷底は材料が降伏していますが、ねじ山の谷底の応力集中を考慮したボルトの疲労強度は、材料の疲労強度を前述したβで割った値となります。
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