連載「テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線」では、筆者が日々ウォッチしているニュースや見聞きした話題、企業リリース、実体験などを基に、コラム形式でデジタルモノづくりの魅力や可能性を発信していきます。連載第6回のテーマは「製造業におけるXR活用」です。
先日、MONOist−メカ設計フォーラムのトップページを見ていたら、「パナソニックが産業VR市場に本格参入、Shiftallの超軽量8K製品で置き換え提案」という記事が目にとまりました。以前にも「シーメンスとソニーが提携、XR用HMDを活用した製品設計ソリューションを発表」というニュースを読んだことがありますが、どうやら日本の大手家電メーカーが産業用XR市場に本格参入し始めているようです。
あらためて説明しますと、XRは、Extended Reality(もしくはCross Reality)の略称で、現実世界と仮想世界を融合して現実にはないものを知覚体験できる技術を意味し、「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」などの包括的な総称として用いられています。
XRは、3D CADを用いたディスプレイ越しでのバーチャル検証よりも、より現実世界に近い体験の中で検証を行うことができます。XRの詳細について詳しく知りたい方は、筆者の過去記事「デジタルモノづくりで試作回数を削減し、サステナブルな未来へ踏み出そう」をぜひご覧ください。
というわけで、今回はMONOistで掲載されたVRニュースを中心に、ここ最近のXRデバイスや製造業での活用動向などについて取り上げてみたいと思います。
XRを利用するには、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)などのデバイスが必要となります。PCに接続するタイプや単体で使用できるスタンドアロン型、スマートフォンと接続して気軽に使えるものなどがあります。以下、その一例として、MONOistやITmediaのニュース記事などで取り上げられたことのある、代表的なデバイスを列挙してみました。各メーカーのデバイスおよび動向について簡単に見ていきましょう。
HTCは主にVRとAR技術を活用した製品を提供しています。2024年9月に新製品となる「VIVE Focus Vision」を発表しました。VIVE Focus Visionは、ヘッドセット単体でのスタンドアロン利用が可能であるとともに、DisplayPortケーブルを用いたPCとの有線接続にも対応しており、PCに搭載されているGPUリソースをフル活用したリッチな体験も可能です。さらに、ヘッドセット前面に組み込まれたステレオカメラによって奥行きを認識する立体パススルー機能を搭載しており、MRヘッドセットとしても利用できます。店舗での製品展示は2024年11月からスタートする予定のようです。
「Meta Questシリーズ」(旧:Oculus Quest)は、Meta(旧:Facebook)が開発提供しているVR/MRヘッドセットです。ワイヤレスで使用できるため、自由な動きを楽しむことができます。最近では、2024年10月15日に「Meta Quest 3S」が発売されています。2023年に発売された上位モデル「Meta Quest 3」の廉価版で、5万円以下から購入できます。
「Microsoft HoloLens 2」は、マイクロソフトが手掛けるMRデバイスです。世界最大級の産業見本市「ハノーバーメッセ 2024」に出展したマイクロソフトは、HoloLens 2および「Dynamics 365 Guides」に生成AI(人工知能)機能である「Microsoft Copilot」を統合し、MRを用いた製造現場支援に生成AIによる音声サポートを組み込んだ新たなソリューションを提案しました。
「Apple Vision Pro」は2023年6月に、Appleの開発者向けカンファレンス「WWDC(Worldwide Developers Conference:世界開発者会議)23」の基調講演で発表された空間コンピューティングデバイスです。翌年2024年6月28日から日本でも販売が開始されました。Apple Vision Proは、デバイスに内蔵された複数のカメラでキャプチャーした高精細な空間の映像に、3Dコンテンツなどを重ね合わせるビデオシースルー方式を採用しています。活用例として、フローシミュレーションの結果をアニメーション表示したり、製造装置の動作をインタラクティブな3Dコンテンツで再現して装置の動きの確認や作業性の検証を行ったりすることが可能です。
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