パナソニックが産業VR市場に本格参入、Shiftallの超軽量8K製品で置き換え提案VRニュース(1/2 ページ)

Shiftallがパナソニックグループと共同開発したVRヘッドセット「MeganeX superlight 8K」を発表。90Hz駆動の片目4K/10ビットHDR対応マイクロOLEDの搭載による高解像度と、本体重量で185g未満という超軽量を最大の特徴とする。また、MeganeX superlight 8Kの完成に合わせてパナソニックグループも産業用VR市場に本格参入する。

» 2024年10月11日 06時15分 公開
[朴尚洙MONOist]

 Shiftallは2024年10月10日、東京都内で会見を開き、パナソニックグループと共同開発したVR(仮想現実)ヘッドセット「MeganeX superlight 8K(読み:メガーヌエックス スーパーライト ハチケー)」を発表した。90Hz駆動の片目4K/10ビットHDR対応マイクロOLED(有機EL)の搭載による高解像度と、本体重量で185g未満という超軽量を最大の特徴とする。価格は24万9900円(税込み)。同日から予約受付を開始し、発送開始日は2025年1〜2月の予定。先行予約特典として、標準の1年保証から2年延長した3年保証を提供する。

「MeganeX superlight 8K」の外観「MeganeX superlight 8K」の外観 「MeganeX superlight 8K」の外観[クリックで拡大]

 MeganeX superlight 8Kの完成に合わせて、パナソニックグループは産業VR市場に本格参入する。Shiftallが「VRChat」などのVR SNSユーザーを中心とするB2C向けに事業を展開する一方で、パナソニックグループは設計開発者のデザインコラボレーションや製造ラインでの活用といった既にVRが利用されているB2B向けの事業を手掛けていく方針だ。

VR SNSユーザー向けの「最高のヘッドセット」に

Shiftallの岩佐琢磨氏 Shiftallの岩佐琢磨氏。右手に持っているのが「MeganeX superlight 8K」

 Shiftall 代表取締役CEOの岩佐琢磨氏は会見の冒頭で、2024年1月の「CES 2024」で発表した「MeganeX superlight」の開発中止を発表した。「MeganeX superlightは片目2.6Kで200gというスペックだったが、その後競合他社がさまざまな新製品を投入する中で、競争力不足と判断し開発を中止した」と語る。2024年4月ごろにこの判断を下した上で、より高いスペックとなる片目4K、185g未満というMeganeX superlight 8Kの開発に取り掛かり、今回の発表につなげたことになる。

 MeganeX superlight 8Kの開発コンセプトは、日本で最も使われているVRアプリであるVRChatなどのVR SNSユーザー向けに「最高のヘッドセット」とすることだった。岩佐氏は「PCがデスクトップだけでなく、薄型ノート、タフ型、ゲーミングノートなど用途ごとに分かれたのと同様に、VRヘッドセットも汎用機にとどまらない用途を絞り込んだ製品が求められるようになる」と説明する。今回のMeganeX superlight 8Kは、VRChatユーザーに向けて機能をとがらせる一方で、不要な機能をそぎ落して開発された。

B2C向けのVRヘッドセットも用途ごとに分かれる時代に B2C向けのVRヘッドセットも用途ごとに分かれる時代に[クリックで拡大] 出所:Shiftall

 185g未満という本体重量は一般的なスマートフォンの重量である200gよりも軽い。SteamVR対応で片目4KのVRヘッドセットとしては世界最軽量クラスとなる。軽量であるだけでなく、本体の重量物格納エリアの厚みは1円玉2枚分とほぼ同じ41mmという薄さも実現した。電動IPD(瞳孔間距離)調整機能(58〜72mm)やダイヤルを用いたピント調整機能なども組み込んでいる。

「MeganeX superlight 8K」はスマートフォンより軽い重量物格納エリアの厚みは41mmという薄さ 「MeganeX superlight 8K」はスマートフォンより軽い(左)。重量物格納エリアの厚みは41mmという薄さ(右)[クリックで拡大] 出所:Shiftall

 台湾BOE製の1.35インチマイクロOLEDパネルは片目4K/90Hz/10ビット対応で、両目での7104×3840の2727万画素となる。高解像度を大きな特徴とする「Apple Vison Pro」が2300万画素、スタンドアロンのVRヘッドセットとして広く用いられている「Meta Quest 3」が911万画素なので、これらと比べてMeganeX superlight 8Kの高解像度が良く分かる。このマイクロOLEDパネルに、パナソニックグループの技術を詰め込んだパンケーキレンズを組み合わせた。

台湾BOE製の1.35インチマイクロOLEDパネル両目での7104×3840の2727万画素 台湾BOE製の1.35インチマイクロOLEDパネルは片目4K/90Hz/10ビット対応(左)。両目での7104×3840の2727万画素は「MeganeX superlight 8K」は「Apple Vison Pro」の2300万画素を超える(右)[クリックで拡大] 出所:Shiftall

 そぎ落とした機能として挙げられるのがMR(複合現実)の機能だ。VRヘッドセットにステレオカメラなどを搭載し、VR空間と実空間を連携させるMRアプリなどに用いられる。「ただし、実際のところMR機能は周辺確認のためにしか使われていない。であれば、MR機能のためにより重くするよりも、本体を跳ね上げて容易に周辺確認できるようにすればいいと考えた」(岩佐氏)。

MR機能は搭載せず、周辺確認の際には本体を跳ね上げるだけで良い MR機能は搭載せず、周辺確認の際には本体を跳ね上げるだけで良い[クリックで拡大] 出所:Shiftall

 また、MeganeX superlight 8Kは有線のVRヘッドセットであり、無線による映像伝送の機能は搭載していない。これは、片目4Kを無線で画質劣化なしに伝送する方法がないこと、無線機能には本体重量が重くなるバッテリーの搭載が必要になる上、動作時間が1〜2時間程度にとどまりVRChatユーザーの利用時間の長さに合わないことが背景にある。有線接続は、USB Type-CによるDisplayPort接続を採用している。

 頭への装着は、柔らかい布製のストラップで後頭部から支えながら額で保持する機構を採用した。一般的なVRヘッドセットは、後頭部側のバンドにバッテリーなどを組み込むなどしているためベッドに寝転がって使うのは難しいのに対し、MeganeX superlight 8Kでは可能だ。また、額で保持するため、本体部を頬に押し付ける使い方にならないことも含めて、長時間の利用に最適な構造となっている。

額で保持する機構を採用本体部を頬に押し付ける使い方にならない 頭への装着は柔らかい布製のストラップで後頭部から支えながら額で保持する機構を採用(左)。跳ね上げ可能なフリップアップ機構は本体部を頬に押し付ける使い方にならないこともメリットに(右)[クリックで拡大] 出所:Shiftall

 マイクはデュアルで内蔵しているもののスピーカーは内蔵していない。拡張USB Type-Cポートを使って、さまざまなイヤフォンやヘッドフォンと組み合わせて利用することを想定している。この拡張USB Type-Cポートは、ハンドトラッキングなど他の拡張デバイスにも利用できる。

 さらに、カメラ用三脚などに使われる1/4-20メスネジアダプターを同梱しており、一脚などを取り付けて虫眼鏡をのぞくような感覚でVR空間を手軽に体験することもできる。

一脚などを取り付け可能 一脚などを取り付け可能。虫眼鏡をのぞくような感覚でVR空間を手軽に体験できる[クリックで拡大] 出所:Shiftall
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