ヤンマーがゼロエミッション船向け水素エンジンの陸上実証に成功、定格出力500kW船も「CASE」

ヤンマーパワーテクノロジーは、日本財団の「ゼロエミッション船の実証実験にかかる技術開発助成プログラム」において、内航船舶向け「発電用パイロット着火式水素4ストローク高速エンジン」の陸上実証試験を進め、定格出力約500kWでの運転に成功した。

» 2024年10月07日 06時00分 公開
[MONOist]

 ヤンマーパワーテクノロジーは2024年10月2日、日本財団の「ゼロエミッション船の実証実験にかかる技術開発助成プログラム」において、内航船舶向け「発電用パイロット着火式水素4ストローク高速エンジン」の陸上実証試験を進め、定格出力約500kWでの運転に成功したと発表した。

「パイロット着火式水素4ストローク高速エンジン(6気筒)」の試験ベンチ 「パイロット着火式水素4ストローク高速エンジン(6気筒)」の試験ベンチ[クリックで拡大] 出所:ヤンマーホールディングス

 今回実証したパイロット着火式水素エンジンは、少量のディーゼル油を点火源(パイロット燃料)として、水素燃料と空気の予混合気を燃焼させる方式となる。この運転により、同方式の水素エンジンとしては、世界最高レベルの水素燃料比率と約500kWの出力を業界に先駆けて実現したとする。

 今後は、パイロット燃料としてバイオ燃料を用いることによるゼロエミッション化試験を引き続き実施する一方で、2026年の実証運航に向け船級認証の取得を目指すという。

 日本財団のゼロエミッション船プロジェクトでは、2050年に内航分野におけるカーボンニュートラルを実現するため、水素を燃料としたゼロエミッション船の開発に取り組んでいる。同プロジェクトでは、水素エンジンの開発と同時に、水素エンジン発電機とバッテリーの組み合わせによる「水素エンジン対応のハイブリッド電気推進船」を開発中だ。これは「水素燃料エンジン」と「水素燃料供給システム」を、コンテナユニット型の水素発電装置として上甲板部分に搭載することができる新たな船舶であり、その開発と建造は上野グループの海運会社である上野トランステックが担当している。

 同プロジェクトのコンソーシアムメンバーであるヤンマーパワーテクノロジーは、水素インフラ普及までの船舶運航を考慮し、少量の着火用バイオ燃料と水素の混焼によりゼロエミッション化を図る「パイロット着火式」エンジンと、「火花点火式」による水素専焼エンジンを同型式で開発しているところだ。2024年からパイロット着火式の6気筒水素エンジンによる陸上実証試験を開始し、2026年の実証運航を計画している。また、同型式の火花点火式水素専焼エンジンによる陸上実証試験を同時並行で進める方針。これらを搭載する水素エンジン対応電気推進船舶の普及を図るべく、その先駆けとして2030年頃からの水素エネルギーを基にした内航船舶のゼロエミッション化に貢献していく構えだ。

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