ヤマ発は海でもCASEに注力、パワートレインはマルチパスウェイで船も「CASE」(1/3 ページ)

ヤマハ発動機はマリン事業の長期ビジョンやカーボンニュートラル対応に関する取り組みを紹介するマリン技術説明会を開催した。

» 2023年12月25日 06時00分 公開
[長浜和也MONOist]

 ヤマハ発動機は2023年12月7日、同社マリン事業の長期ビジョンやカーボンニュートラル対応に関する取り組みを紹介するマリン技術説明会を開催した。

ヤマハ発動機取締役常務執行役員の丸山平二氏

 ヤマハ発動機 取締役 常務執行役員の丸山平二氏は同事業部の長期ビジョンと解決すべき重要な社会課題として「環境と資源」「交通と産業」「人材活躍推進」を挙げた。特に環境と資源の課題に対しては、同社事業部のサステナブルな成長に関わる最重要課題と位置付け、製品ライフサイクルにおけるCO2排出量でカーボンニュートラルを目指すことを中長期目標とすると述べた。

 丸山氏は、ヤマハ発動機が関わるサプライチェーン全体で排出するCO2排出量を示し、そのなかで8割が同社生産製品を稼働するときに排出するものとした上で、さらにその中の28.4%が船外機から、そして、4.9%がパーソナルウオータークラフト(いわゆる水上バイク)とスポーツボート(いわゆるプレジャーボート)が占めていると説明した(ちなみ最も多いのは二輪車で58.0%)。

ヤマハ発動機におけるCO2排出量[クリックで拡大] 出所:ヤマハ発動機

 企業がその活動の中で排出するCO2は、その排出原因からスコープ1、2、3に分けられる。ヤマハ発動機では全てのスコープで2050年にカーボンニュートラルを実現する目標を掲げているが、このうち、スコープ1と2では2010年比で60%の削減を2022年に達成した。これは当初計画より早いペースで進んでおり、現在は目標よりも15年早い2035年のカーボンニュートラル達成を目指すとしている。

 なお、排出量の98%を占めるスコープ3(先に挙げている生産製品稼働時排出量の他、製品生産活動による排出量がここに含まれる)に関しては2022年に2019年比5.5%の削減を実現。当初の計画通り2050年の達成を目指すとしている。

 「アジア地域において小型で安価なモビリティを提供することも私たちの重要なミッションであり、また同様に、マリン製品についても、新興国や途上国を中心とした業務利用は人々の生活のためにも欠かすことができない。私たちは、このように相反する2つの大きな課題に全力で答えていく」(丸山氏)

CO2削減計画とその見通し。スコープ1と2で15年の前倒しとなる見込みだ[クリックで拡大] 出所:ヤマハ発動機

マリンはマルチパスウェイで脱炭素

 カーボンニュートラルの目標達成ではエンジンをモーターとバッテリーに置き換える電動化が話題になるが、丸山氏は「マリン製品は小型であるが故の制約がある。つまり、高価で大きく重いバッテリーを自動車のようにはたくさん積むことができないため、電動化だけでは航続距離や価格の問題への対応が非常に難しい」という。そのため、既存のエンジン技術や駆動系技術だけでなく、新エネルギー対応技術などマルチアプローチでの開発を推進していると説明した。

 説明会で示した資料では、その先の成果物として、バッテリー、燃料電池、水素エンジン、電源パワートレインや合成カーボンニュートラル燃料のそれぞれに対応した船外機や船外機を搭載した小型船舶が示されていた。「当社は二輪車など多くの事業を有する。バッテリー、燃料電池、水素エンジン、カーボンニュートラル燃料など、用途などに合わせて最適な解決策を探り、マルチパスでの検討を進めている」(丸山氏)

数多くの事業部を擁するヤマハ発動機の強みを生かして複数の手段による実現を目指す[クリックで拡大] 出所:ヤマハ発動機
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