NTTコミュニケーションズなど9社は先端通信技術と路車協調システムによって自動運転バスを走らせる実証実験を開始する。
NTTコミュニケーションズなど9社は2024年9月30日、先端通信技術と路車協調システムによって自動運転バスを走らせる実証実験を開始すると発表した。複数の無線通信品質の劣化を予測しながら未然に切り替え、混雑するエリアでも安全な自動運転が可能か検証する。実証実験は総務省の令和5年度補正予算「地域デジタル基盤活用推進事業(自動運転レベル4検証タイプ)」に採択されている。
NTTコミュニケーションズ以外の参加企業は、相鉄バス、先進モビリティ、東海理化、スタンレー電気、パナソニック コネクト、ドコモ・テクノロジ、NTTテクノクロス、NTTデータ経営研究所。「よこはま動物園ズーラシア」の周辺で実証実験を行うため、横浜市とも共同で実施する。
バスはドライバー不足による減便や路線廃止が広がっており、それらの課題解決に向けて自動運転技術の導入が有望視されているレベル4の自動運転で走行する際には、都市部や観光地など混雑したエリアでは通信が不安定になるなどの課題があり、安全性確保に向けた対策が必要だ。また、警察庁のガイドラインに従った遠隔監視に加え、死角にある一般車両や歩行者を適切に検知することも求められる。
そこで、年間で100万人が来場するなど混雑が想定されるよこはま動物園ズーラシアの周辺を実証実験の場に選んだ。実証実験では、ローカル5Gと5Gワイドの無線品質の劣化を予測して未然に切り替える「Cradio」による通信システムの検証や、AV-QoSで映像伝送の遅延やカクつきを最小限に抑える検証を行う。
CradioはNTTアクセスサービスシステム研究所が開発を進めている技術で、複数の無線ネットワークで安定した通信品質を提供することを目指している。NTTのネットワーク/情報処理基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」の構成要素の1つだ。
実証実験では、自動運転バスにAV-QoS対応エンコーダーを搭載する。映像伝送時のGPS情報や電波受信感度を取得し、伝送時刻や伝送レート、遅延時間などを確認した上で、解像度がフルHD以上となるよう映像伝送レートや圧縮率などを調整しながらAI(人工知能)による画像解析に必要な映像品質を実現する。ネットワーク切り替えが発生するエリアを通過する際には、遠隔管制の映像に乱れがないか、システム動作や映像の復帰に問題がないかも検証していく。
また、既設の道路灯をAIカメラ搭載のスマート道路灯に置き換える。自動運転バスの走行区間に侵入する可能性のある一般車両や歩行者を検知し、カメラ映像で遠隔監視室に通知できるか検証する。自動運転バスから直線距離で50m以内にいる車両や歩行者を検知対象とする。また、スマート道路灯に装着した電光掲示板を用いて一般車両や歩行者に自動運転バスの走行を知らせて安全性を向上できるか確かめる。
実証実験の実施期間は2024年9月30日〜同年10月8日。自動運転バスの運行時間は午前10時半〜午後4時半で、よこはま動物園正門5番バス停と北門バス停(乗降なし)を往復する2kmの区間を走らせる。ルートの途中に5Gワイドとローカル5Gを切り替える地点と、スマート道路灯2つが設けられる。運行監視はよこはま動物園と、よこはま動物園から4kmほど離れた相鉄バス旭営業所で行う。
事前に予約すれば試乗でき、運賃は無料だ。使用する自動運転バスは、先進モビリティが所有する、日野自動車「ポンチョ」ベースの車両だ。試乗の定員は10人。
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