3D CAD利用動向調査から考える導入/活用の進め方テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線(4)(2/2 ページ)

» 2024年08月21日 09時00分 公開
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3D CAD導入を進めるために必要なこと

 3D CAD導入を推進しようとする現場に対し、筆者はよく「3D CADは、電動ドライバーのような道具を導入するのとは違いますよ」と説明しています。電動ドライバーであれば、作業者に渡してすぐに使えるようになるでしょう。これまで手動のドライバーで力を入れてネジを締めていたのが、電動ドライバーの導入により作業が楽になり、効率もすぐに上がるはずです。しかし、3D CADの場合は購入して、すぐに使えるようになるわけではなく、その効果を得るには“きちんとした教育”が必要です。

 同調査における「設計現場の課題解決に必要だと思うこと」の問いに対して、「人材教育/育成のための体制構築」を挙げている人が58.2%と半分以上の割合でした。多くの皆さんが人材教育/育成の重要性を強く感じているようです。

 3D CADの導入は、ITシステムの導入と同じです。3D CADで作成した3Dデータは、作成した設計者だけが活用するものではなく、社内や社外の関係する人たちと共有し、活用してこそ、大きな効果を発揮できます。会社全体のプロジェクトとして、導入/運用の仕方を検討することが大切です。

 また、3D CAD導入を検討する際、導入の目的を明確にしてください。導入前と導入後の姿をイメージし、どのような導入効果を期待しているのかを明確化します。そして、現在の業務プロセスの中に、どのように組み込まれるのか、誰の作業が、どのように変わるのかといった役割や期待についても明確にする必要があります。併せて、誰が評価を行い、継続的な運用を行うのか、いつ、どのタイミングで、どのような評価をするのかなどの運用についても明確化しておきます。

 3D CAD導入を進める理由は、経営者的な視点、技術者的な視点、現場的な視点など、さまざまありますが、会社全体で話し合いを持ちながら、3D CADで作成した3Dデータ活用に取り組んでいく必要があります。そのための人材の育成が必要不可欠です。

 3D CADとうまく付き合うには、最初が肝心です。3D CAD活用のメリットとデメリットをしっかりと理解し、業務プロセスを変えていくことも重要です。そのためには、3D CADに関する知識が不可欠になりますが、独学でマスターするのはやはり難しいものです。きちんとした使い方や活用法を知らないと「3D CAD=面倒なツール」になってしまう恐れがあります。講習会などを活用し、きちんとした教育を受けることをオススメしています。

3D CAD導入のスケジュール例 図3 3D CAD導入のスケジュール例[クリックで拡大]

 さらに同調査の「今後、設計者に求められるスキル」に関しては、「基礎知識(設計、製図、解析、材料力学などの座学)」が70%以上を占めてトップ。次に「設計、製図力」「デザイン、開発力」が続いており、全般的に基本的な設計スキルの底上げに対する関心が高いように感じました。

 3D CADにおいても“正しいモデリング作法を覚える”ことが、導入効果を引き出すための重要な第一歩です。設計のために基礎知識が欠かせないのと同じく、3D CADを活用して十分な効果を発揮するには、独学ではなく、きちんとした作法をマスターすること、そのための教育が必要です。

今回のまとめ

 3D CADのメリットは、誰でも形状が理解できるという点です。そのメリットを生かし、現場でより分かりやすいモノづくりができるようになれば、現場の人たちもきっと喜んでくれるはずです。3次元の良さをしっかりと理解してもらい、不安を払拭(ふっしょく)する努力を惜しんではなりません。

 3D CADなどの3次元ツールの導入を検討する際には、設備中心の考え方ではなく、人を中心に、人が喜ぶことをするという“モノづくりで最も重要なこと”を忘れることなく、ツール導入やプロセス改善を進め、全社を挙げての3Dデータ活用に取り組むべきだと考えます。設計者にとって働きやすい環境が構築できれば、その効果はより良い製品づくりにもつながり、人々の暮らしや社会もより豊かなものへと変わっていくはずです。

 今回の調査における「将来の普及に期待しているテクノロジー」の項目では、AI(人工知能)や生成AIの関心が高かった他、リアルタイムシミュレーション、3Dプリンタ、デジタルツイン、VR/AR/MRなどが挙がっていました。これらを活用していくためにも、3D CADで3Dデータを作成することが重要です。

「関心がある、将来の普及に期待しているテクノロジー」について 図4 「関心がある、将来の普及に期待しているテクノロジー」について[クリックで拡大]

 これから3D CADを導入する方、さらなる活用を考えている方にとって、本稿および本連載が参考になれば幸いです。 (次回へ続く

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筆者プロフィール

小原照記(おばら てるき)

いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。


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