中種中量生産で量産効果を生み出す「GT」とは何か現場改善を定量化する分析手法とは(9)(4/4 ページ)

» 2024年08月21日 08時00分 公開
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5.GTにおける類似品の分類体系

 GTの目標は、設計、生産準備や製造の各部門の生産性の向上であって、この手法の導入に際しては、基本となる類似品の分類の体系化がポイントとなります。GT化の対象とする加工物の形状、寸法、加工方法(段取り作業、ワークの保持方式、機械加工、組立作業、工程順序、測定方法など)に基づいてパターン化し、番号によるコードの付与を行います。

 図3は加工品についての分類体系の一例ですが、一般的に使用される分類コードは、数字5桁の「形状コード」と数字4桁の「補足コード」から構成されています。分類の内容は次の通りです。このようにコード化し、加工品をコード番号で分けて、同じコード番号をもった類似品を集めて、同時に加工を行うのがGTの特徴です。

  • (1)形状コード5桁の1桁目で全体形状を大別します。まず、回転形状品と非回転形状品に分けます。回転形状のものはシャフトのように同心形のものが多く、半径と長さの比の大小でさらに細かく分類します。また、非回転形状品については、立方体形状が多く平面の特殊な形状でさらに分類します
  • (2)2桁目は、主形状(外面形状)を大別します。回転形状品では外面加工を行うかどうか、ネジの部分があるかないかなどで分類します。非回転形状品では、平面が規則正しい形状になっているかなどで分類します
  • (3)3桁目は、内面形状を大別します。回転面の加工、穴加工で分類します
  • (4)4桁目は、平面加工の内容で分類します
  • (5)5桁目は、補足的な穴あけ加工、歯切り、塑性変形などで分類します
  • (6)補足コードの4桁は、寸法、材質、素材形状、精度など、さらに詳しく分類するために使われます。例えば、5桁の形状コードに加えて、6桁目に寸法、7桁目に材質、8桁目に素材形状、9桁目に精度を表す4桁の補助コードを追加して、分類コードが合計9桁になる場合があります
図3 図3 加工品分類の体系[クリックで拡大]

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 GTは冒頭にも述べた通り、部品の形状や加工工程などの類似性に基づいて加工対象物をグループ化して、類似品を同時に取り扱うことによって、設計や生産の効率性が高まるという考え方に基づいた手法です。設計段階では、類似形状を持つ加工品は類似設計になるという考え方をすれば、新製品設計の際は、図2の通りに既存の類似部品を見つけ出し、それに必要な変形を加えるだけで効率よく行うことができます。また生産においては、類似品を一緒に加工や組み立てを行うことによって、段取り回数、工程間の運搬や工程内の待ち時間を減少させることができます。

 GTを導入する際は、加工品のグルーピングをどのように構成し、その生産に必要とする機械設備をどのようにレイアウトするかが重要となってきます。また、グルーピングコードをあまり細かく設定するとロット当たりの数量が減少してせっかくのGT効果が得られません。また、粗放な分類では多大な管理工数を要してしまうことになります。従って、このグルーピングについてはよくよく検討を行い、分類目的などを明確にした上で、自社に合った方法や内容で行うことが重要です。

筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)

日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



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