安川電機が教える、CAEの実践と解析スキル向上への道CAEユニバーシティ特別公開フォーラム2024(3/3 ページ)

» 2024年08月19日 09時00分 公開
[八木沢篤MONOist]
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CAEの実践に向けて必要な考え方

 「解析技術の構築がゴールではなく、より良い設計に向けたフロントローディングの実践こそがゴールであり、そのために教育がある」と村上氏は強調する。

 そして、CAEの実践に向けては部長レベルからのトップダウンと、設計者からのボトムアップの両面から取り組み、設計者の活動を解析技術者がサポートすることが大切だという。これにより、各種モーター開発でのCAE活用を推進。さらに、実測と解析結果とを比較して課題があれば解析技術をブラッシュアップするなど、PDCAサイクルを回し、改善につなげる活動にも取り組む。部の方針として取り組むとなれば設計者は否が応でもCAEを実践しなければならない。

 実践テーマについては、課長クラス/開発リーダーと事前にすり合わせ、合意の下で進めるべきだという。「まず、トップダウンする際、管理職の方々はシミュレーションのことを理解した上で現場に指示すべきだ。丸投げでは絶対にうまくいかない。一方、設計者側もただ口を開けて待っているのではなく、自分たちのスキルを上げていかないと、将来、結果的に自分たちに返ってきてしまうことを真剣に考えるべきだ」(村上氏)。

CAE解析の実践 図6 CAE解析の実践[クリックで拡大] 出所:安川電機

課題と今後の展望

 ここまでの説明から、非常に順風満帆な取り組みに聞こえるかもしれないが、村上氏は「常に悩みながらやってきた。そして、完璧ではなく課題も多くある」と述べる。そのうち、代表的な課題としては、(1)関係部門への振動解析技術の展開、(2)設計者によるCAE解析の実践、(3)全社教育内容の検討を挙げる。

 (1)関係部門への振動解析技術の展開では、自部門、事業部のモーター開発部門への展開はできたが、モーターを使用するロボットへの展開まではできていないという。「こちらについては、2024年度から技術構築を進めて、教育活動も巻き込んで実施していく」(村上氏)。

 (2)設計者によるCAE解析の実践では、いかに設計でCAE解析を定着させるのかと、設計者のさらなるスキル向上に課題を感じているという。ただし、まだ取り組み始めたばかりなので「これまで通り、引き続き継続していく」(村上氏)としている。

 (3)全社教育内容の検討については、「体制や人員のスキルレベルは年々変わるため、同じ教育を、同じようにやっていても、マッチしない可能性もある。足りないものもあるはずなので、教育内容の拡充、最適化が必要だ」と村上氏は述べており、関係者との話し合いを進めながら取り組んでいく必要があるという。



 講演の最後、村上氏は、AI(人工知能)を活用したシミュレーションの登場など、時々刻々と変化するCAEを取り巻く環境や状況にしっかりと対応していく必要があること、解析技術を構築し、設計者に使ってもらうための教育をして、実践し、課題があれば技術構築にフィードバックして改善につなげていく、スパイラルアップの取り組みが最も重要であること、トップダウンとボトムアップの両面からの取り組みが欠かせないことを強調。そして、「シミュレーション教育は、単に教育だけをすればいいものではなく、CAE解析の対象である実機の現象を把握する実測が非常に重要となる。実測、解析、教育が三位一体となることで、より効果的な成果が得られるようになるだろう」(村上氏)と述べ、講演を締めくくった。

まとめ 図7 まとめ[クリックで拡大] 出所:安川電機

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