サイバネットシステム主催「CAEユニバーシティ特別公開フォーラム2024」のユーザー講演に登壇した安川電機は「モータ開発におけるCAE解析の実践とスキルアップ活動」をテーマに、CAE教育の取り組みについて紹介した。
サイバネットシステムは2024年7月19日、CAE技術者の人材育成に焦点を当てたイベント「CAEユニバーシティ特別公開フォーラム2024」を東京都内で開催した。同イベントは2014年から開催しており、同社が主催する「CAEユニバーシティ」の講師やCAE社内教育に携わる有識者によるCAE教育に関する講演が行われる。今回は「未来を拓くCAE教育の在り方〜若手育成からリスキリングまで〜」をテーマに、次世代を見据えたCAE技術者の育成に役立つ情報が発信された。
本稿ではユーザー講演から、安川電機 技術開発本部 基礎技術開発統括部 モータ・アクチュエータ技術開発部 モータ技術課 課長補佐の村上敦氏の講演「モータ開発におけるCAE解析の実践とスキルアップ活動」の模様をダイジェストでお届けする。
講演の軸となるのは、安川電機の主要製品であるACサーボモーターやPM(Permanent Magnet)モーターの振動を予測するCAE解析技術開発の取り組みとなる。同社は2018年3月〜2019年2月の1年間、部内の設計者のCAE解析スキルアップ活動として開発テーマと連携した取り組みを実施。そのうちの一つ、モーターの振動/音響解析技術の構築に若手設計者(2人)を参加させることで、CAE解析のスキルアップを図った。「当時まだなかったサーボモーターの振動/音響解析技術の構築と併せて、設計者のCAE解析スキルも向上させようという“一石二鳥”の発想で取り組みを開始した」(村上氏)。今回の講演では、その活動の過程と内容、課題や今後の取り組みについて紹介した。
具体的な教育の中身に関しては、CAEツールの操作教育や座学に焦点を当てた内容ではなく、振動や音のメカニズムを徹底的に理解することを重視した次の4つの流れで推進した。
「まず、解析対象となるモーターについて、振動や音のメカニズムに対する理解から開始し、その上でモーターの振動や音の実測を行った。ここまでやって、初めてCAEツールを使っての振動/音響解析の教育を実施し、最後に実測と解析結果との比較を行うという流れで教育を展開した」(村上氏)。これにより、これまで設計者に不足していた、振動/音測定、周波数応答解析、音響解析、検証と妥当性確認(V&V:Verification&Validation)の4つのスキル向上を目指した。
「1.モーターの理解」では、振動/音が発生する要因を設計者とディスカッションしながら、モーターの振動と騒音が増大する主要因について確認し、CAE解析で予測すべき現象(ステータの揺れ)を明確にしたという。
続く「2.振動/音の実測」では、先ほど当たりを付けた振動と音が増大する主要因が本当に正しいのかを、実測で確認し、振動と音が最大となる現象を特定。さらに、製品であるモーターの実測だけでは解析条件の合わせ込みや妥当性の確認ができないため、各部品、サブアセンブリごとに固有振動数と変形モードを測定した。
「3.振動/音響解析の教育」については、サイバネットシステムに依頼。当時、推進者の村上氏の業務は解析ではなく、新規ロボットの技術開発がメインだったこともあり、教育活動に割ける時間が多く取れなかったという。「サイバネットシステムのCAE技術トレーニングとCAEユニバーシティを組み合わせた良いとこどりのような形で進めた。社外の力を有効活用することで、CAEツールの操作習得の垂直立ち上げを実現した」(村上氏)。
「4.実測とCAE解析結果との比較」では、各部品、サブアセンブリごとに実測と固有値解析の結果を比較し、モデル化や各種解析条件(締結条件、材料物性値、メッシュサイズなど)を検証して、妥当性を確認した。「モーターの組み立て加工まで考慮した場合と、そうでない場合とで解析結果を比較し、組み立て加工まで考慮することで実機に近い解析結果を得ることができ、解析手法の妥当性を確認できた」と村上氏は説明する。
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