以上の取り組みによる成果として、狙い通り、先に上げた4つの項目(振動/音測定、周波数応答解析、音響解析、検証と妥当性確認)全てのスキルアップが確認できたという。また、教育活動の中で、応力解析や固有値解析も行っているため、これらの解析スキルについても自然に(副次的に)向上していったという。
さらに、この教育活動でスキルアップを果たした設計者が、モーター開発において、ステータの固有振動数を上げる設計案の効果を固有値解析で確認するなど、CAE活用を推進。これにより、試作品の製作工数やコスト、実測工数などの削減につなげた。「ここでも実測を行っている。実測した結果と解析結果を比較し、誤差10%前後で合うことを確認した上で、4つの対策案の効果を比較し、設計に役立てた」(村上氏)。
ここまで紹介した通り、2018年3月〜2019年2月の1年にわたるチーム内での取り組みは狙い通りの成果を得ることができた。今度はこの成功を部内で展開することを目指し、2019〜2022年までの期間で取り組んだ。2018年のメンバーを軸に、教育対象のメンバーを追加/入れ替えて、サーボモーターや車載用モーターの振動解析技術構築を進めつつ、設計者の解析スキルアップを目指した。解析技術の構築のポイントとして、村上氏は「設計者の観点も入れながら構築することが非常に重要だ」と述べている。
そして、部内での展開もうまくいき、この成果を事業部、全社へ展開することを考えるようになった。その転機となったのは、2021年9月のこと。イノベーション創出を目指す技術開発拠点「安川テクノロジーセンタ」(福岡県北九州市)の稼働に併せ、製品開発と基礎技術開発の部門が集約されたのだ。
事業部展開では、まず振動/騒音関連の相談に来た事業部のモーター開発部門へスキルアップ活動を提案し、開発における課題解決を目的とした教育を実施。同時に、解析相談に来た設計者に対して個別教育も実施した。
さらに、全社展開においては、CAEツールの操作や振動解析に関する知識の習得など、基礎教育が必要だと考え、全社の設計者が受講する全社教育の一つとしてCAEツール教育の実施を提案。サイバネットシステムの協力の下、CAEユニバーシティの「CAE実験室」に加え、CAE技術トレーニングの「Ansys Mechanicalセミナー」(注1)を実施し、解析スキルの底上げに努めた。
※注1:安川電機では、サイバネットシステムが提供する「Ansys Workbench Mechanical入門セミナー」および「Ansys Workbench使いこなしセミナー」を導入している。
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