連載「設計者CAE教育のリデザイン(再設計)」では、“設計者CAEの教育”に焦点を当て、40年以上CAEに携わってきた筆者の経験に基づく考え方や意見を述べるとともに、改善につながる道筋を提案する。
筆者はこれまで、材料力学、有限要素法、構造解析、資料作成についての連載を執筆してきました。そのどれもが、立ち位置は設計者であり、設計に役立つためのCAEをお伝えしたかったわけです。
今回スタートする新連載「設計者CAE教育のリデザイン(再設計)」では、視座を1つ上げて、“設計者CAEの教育”についての筆者の考え方や意見、提案を述べていきたいと思います。想定する対象読者は以下のような人たちです。
なお、商品の宣伝や忖度(そんたく)は一切しません。本連載が皆さんの活動の一助になれば幸いです。全5回を予定しています。どうぞ最後までお付き合いください。
※記事の内容は、現場経験から得られた事実ですが、もちろん該当しない企業もありますので、そのあたりはどうかご容赦ください。
筆者は四十数年間、CAEに関わる仕事をしてきました。設計者に対するCAEの教育は、ほとんど変わっていないと思っています。大体こんな感じです。
これはCAEを設計に活用するための王道です。この方法で解析専任者顔負けの解析技術を習得し、設計にCAEを使いこなす設計者が存在することは確かです。
CAE上達の決め手は何か? それはズバリ、「経験」です。ピアノの練習を重ねれば重ねるほどピアノは上達します。それと同じです。
問題なのは、経験や練習に必要な「時間の確保」です。
設計者は忙しいのが常です。製品の複雑さは増し、環境対応など設計の制約条件も増える一方……。会議や事務作業に時間を取られ、働き方改革や残業規制によって、設計に集中できる時間は限られています。CAEの習得にかけている時間などないのが現状です。だからといって設計にCAEを使わなければ、日本の製造業の製品開発プロセスは、世界標準からどんどん後れを取ってしまいます。
こうした現状を打破するには、設計者のCAEの使い方を変えなければなりません。そして、教育方法も変えなければならないのです。
筆者は「解析工房」という設計者向けの材料力学と有限要素法の講習会を主催しています。その中で、材料力学の理解度調査を行っており、次の5段階で理解度を自己申告してもらいます。
これまで2000人を超える設計者が解析工房の講習会を受講していますが、その平均をとってみると以下のような結果となります。
「ザックリと理解している」「うろ覚え」「習ったが忘れてしまった」がちょうど3分の1ずつです。
材料力学は設計者にとって「きほん」の「き」のはずです。設計に必要なヤング率や降伏応力も材料力学の範囲です。そうであるにもかかわらず、設計に必要な重要なパラメーターを、3分の2の設計者がうろ覚え以下で、忘れてしまった知識を掘り起こしながら設計をしているってコワくないですか?
CAEの結果でミーゼス応力や主応力が分かっても、その物理的な意味が分からなければダメです。
材料力学は広く深い学問です。全ての知識を習得するのはしょせん無理な話です。設計に必要な最低限の材料力学の知識は身に付けておきましょう。CAEには関係ありません。材料力学の最低限の知識は“設計者のライセンス”です。
必要最低限の材料力学の知識とはどんなものか。項目については、以下のURLを参照してください。
このあたりの知識がなければ、CAEを使うべきではありません。最低限の材料力学の知識、できれば最低限の有限要素法の知識を習得してから、CAEを使うべきです。「話はそれからだ」というやつですね。
書籍で知識を得るのもよし、講習会に参加するのもよし。とにかく最低限の知識は身に付けてください。
特にオススメなのが、YouTubeの活用です。素晴らしいコンテンツがそろっています。以下のリンクはその代表例です。
また、筆者の連載も参考にしてみてください。
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