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IHI原動機が国交省に中間報告、舶用エンジンの燃費データ改ざんで品質不正問題

IHI原動機と親会社のIHIは舶用エンジンなどの燃料消費率のデータ改ざんに関する調査状況や再発防止策について国土交通省に中間報告を行った。

» 2024年06月05日 10時30分 公開
[齊藤由希MONOist]

 IHI原動機と親会社のIHIは2024年6月4日、舶用エンジンなどの燃料消費率のデータ改ざんに関する調査状況や再発防止策について国土交通省に中間報告を行った。顧客向け仕様確認のための出荷前運転の他、別途実施するNOx放出量確認試験においてもデータ改ざんが確認されたが、国内向け出荷エンジンがNOx放出量で基準非適合となるケースは確認されていないという。

 国土交通省は、残りの調査と報告を速やかに実施し、抜本的かつ具体的な再発防止策を策定するよう指示した。また、今後新たに製作される同社製のエンジンは、再発防止策の妥当性確認の一環で当分の間、国の立ち会いの下でNOx排出量確認試験を厳格に行い、証書の交付を再開する。

 IHIとIHI原動機からの中間報告は、不適切行為の概要と改ざんを行った理由、改ざんの内容、主な再発防止策について触れた。

 行われた不適切行為は、IHI原動機の太田工場と新潟内燃機工場での2種類の試験における燃費消費率の改ざんだ。1つが顧客に納入するに当たっての仕様確認のための出荷前試運転。もう1つが、海洋汚染等防止法に基づくNOx放出量確認試験で、データを認証機関に提出する必要がある。安全性に関する不適切行為は確認されていないという。

 仕様確認のための出荷前試運転で改ざんを行った理由は、両工場において試運転による燃料消費率の計測値が顧客に提出している仕様値に入らない場合に仕様値の範囲に収めるためだった。また、過去に顧客に納入した同一エンジンの値との整合を図るのも理由だった。

 仕様確認のための出荷前試運転は規制の対象外だが、燃料消費率計測時と異なる数値を顧客へ提出する成績書に記載することなどにより、2003年以降で国内向けに出荷された舶用エンジン1973台中1689台について改ざんを行った。そのうち621台において顧客に提出している仕様値からの逸脱が判明した。

 海洋汚染等防止法に基づくNOx放出量確認試験では、新潟内燃機工場において燃料消費率計測時の数値(実測値)と異なる数値をNOx計算時に使用し、この数値を認証機関に提出した。NOx放出量規制の対象となる国内向け舶用エンジン1932台のうち242台において改ざんを確認した。

 国内向けに出荷された舶用エンジンでNOx放出量に関わる基準値を逸脱するものは確認されなかったが、海外向けに出荷された舶用エンジン4台について、NOx放出量に関わる基準値を逸脱しているものが見つかっている。なお、国内向けに出荷された舶用エンジンのうち226台が現在も調査中だ。

 国土交通省は、中間報告書の内容が現時点における立ち入り検査などの調査結果とも整合するとしている。

 主な再発防止策として、運転検査員の検査機能を品質管理部門に移管するなどの組織体制の再構築、現場で記録を確認して工場試験成績書にする作業フローの策定、NOx放出量確認試験や出荷前試運転における燃料消費量の計測と記録の自動化などを挙げている。

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