熊本大学は、血液中のHBs抗原およびB型肝炎ウイルスの複製を抑制する、強力で経口投与可能な新規低分子化合物「SAG-524」を開発した。新たなHBV治療法への応用が期待される。
熊本大学は2024年4月12日、血液中のHBs抗原およびB型肝炎ウイルス(HBV)の複製を抑制する、強力で経口投与可能な新規低分子化合物「SAG-524」を開発したと発表した。新たなHBV治療法への応用が期待される。
SAG-524は、B型肝炎の治療目標であり、機能的治癒と呼ばれる血中HBs抗原の消失を達成するために開発。3万種類の化合物から候補薬剤を発見し、これを最適化することで、低濃度でHBVのDNAとHBs抗原を効果的に減少させることが可能だ。
HBV-DNAとHBs抗原を低減する作用を解析すると、ポリ(A)ポリメラーゼPAPD5を阻害してHBVのRNAを不安定化することが分かった。これによりHBs抗原を低下させ、ウイルスの複製を阻害する新しい作用機序を持つことが判明した。
マウスを用いた実験では、B型慢性肝炎の標準治療である核酸アナログ製剤にSAG-524を併用することで、有効性が上乗せされることが確認された。また、サルを用いた安全性試験では、血液検査と病理像に明らかな毒性は認められず安全性が確認された。
B型慢性肝炎、肝細胞がんなどの原因となるHBV感染は重要な感染症だ。しかし、現在第一選択薬として用いられている核酸アナログ製剤は血液中のHBs抗原の低下効果が限定的であり、新規治療薬の開発が求められていた。
熊本大学は、SAG-524の臨床試験に向けて準備を進めており、さらに核酸アナログ製剤との併用による経口2剤併用療法など、新しい治療法の開発も並行して取り組んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.