名古屋大学は、センダイウイルスの遺伝的多様性を高め、持続感染性を獲得したウイルスを得ることに成功した。センダイウイルスのベクター機能改良や、急性感染性ウイルスの生態解明に貢献する成果だ。
名古屋大学は2024年4月2日、細胞と長期間共生できる、変異センダイウイルスを見いだしたと発表した。この変異センダイウイルスは、ゲノム上の4〜5カ所の変異で持続感染性を獲得し、生体温度での増殖性を維持していた。広島大学との共同研究による成果となる。
げっ歯類の急性呼吸器病ウイルスであるセンダイウイルスは、ウイルス複製時に変異が発生しやすい性質を持つ。遺伝的な多様性の低いセンダイウイルスは、持続感染性は有していなかった。
今回の研究では、ニワトリの胚性鶏卵を用いて、ウイルスの継代を繰り返して遺伝的多様性を高めた。これにより、ウイルス感染が持続する持続感染細胞の樹立に成功した。
持続感染細胞から分離した変異センダイウイルスのゲノム解析を試みた結果、わずか4〜5カ所の変異のみで、持続感染性を獲得していることが明らかとなった。また、この変異ウイルスは、これまで報告されていたウイルスと違い、37℃という生体温度で自立増殖し、感染を拡大させる能力を持つことも分かった。
一部のウイルスは持続感染性を有するが、インフルエンザウイルスなど多くの急性感染性ウイルスは感染が持続しない。急性感染性ウイルスで持続感染するケースもあるが、そのメカニズムは十分に解明されていなかった。
また、これまでの研究で、センダイウイルスが複製効率の高いコピーバック型欠陥干渉ゲノムや温度感受性変異を獲得することで、持続感染性を有することが報告されていた。今回の研究では、それらとは異なるメカニズムで、センダイウイルスが急性感染後、長期間複製を繰り返すうちに発生した偶発的な変異により持続感染性を獲得し得ることが示唆された。
センダイウイルスは、細胞に遺伝子を運ぶベクターとしての機能を持ち、さまざまな用途に利用できる。同研究成果は、センダイウイルスのベクター機能の改良や、急性感染性ウイルスの生態解明に貢献することが期待される。
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