矢野経済研究所は、リチウムイオン電池の主要四部材の世界市場に関する調査結果を発表した。2023年の同市場は886億2661万9000ドルで、部材メーカーは今後、時間軸と対象エリアの視点を広げた最適戦略の構築が求められる。
矢野経済研究所は2024年4月2日、リチウムイオン電池(LiB)の主要四部材の世界市場(メーカー出荷金額ベース)に関する調査結果を発表した。2023年の同市場は、886億2661万9000ドル(約13兆4000億円)で前年比100.8%を見込む。今後、部材メーカーは、時間軸と対象エリアの視点を広げた最適戦略の構築が求められる。
同調査によると、2023年の車載用LiB市場は成長に鈍化傾向が見られる。電動車(xEV)市場は、欧州で補助金の打ち切りや減額、エネルギーコスト高騰などが重なり、プラグインハイブリッド車(PHEV)を見直す動きが出ている。北米では、IRA(インフレ抑制)法の補助政策から市場は成長傾向にあるが、自動車メーカーのEV販売台数は目標ほど伸びていない。中国は、経済低迷に加えて充電インフラ整備が不十分で、EV成長に影響が出ている。
一方、民生小型機器用LiB市場は、ノートPCやスマートフォン向けセルが2022年からマイナス成長になったことなどから、低成長で推移した。なお、資源価格の下落や成長鈍化によるオーバーサプライなどが影響し、LiB主要四部材の全ての価格が2022年までの上昇から一転し、2023年より下落傾向となった。
国別の出荷数量シェアは、四部材とも中国が80%を超えている。シェア上位の中国LiB部材メーカーは、2022年も前年比140〜200%の成長を遂げた企業が複数あり、中国のNEV(新エネルギー車)市場、車載用LiB市場の拡大の影響を受けたと考えられる。民生小型機器用LiB市場では、セパレーターでコスト優位の中国LiB部材メーカーが出荷量を増やし、国別出荷数量シェアの拡大に貢献した。
日本と韓国のLiB主要四部材メーカーは、韓国の電解液シェアを除き、2022年と2023年で出荷数量シェアが低下している。ただし韓国のLiB部材メーカーは、LiBメーカーの成長に合わせて、出荷量が堅調に伸長しているところもある。
中国では新エネルギー車(NEV)に対する国家補助金が2022年で終了し、市場経済化の段階に入ったと考えられ、健全な競争環境にシフトしつつある。一方、欧州ではPHEVを見直す動きが2023年後半より見られ、自動車メーカーはEVやPHEVの販売目標の達成時期を後ろ倒しにしている。北米でもEVの発売延期や減産、LiBメーカーとの合弁工場計画見直し、EV生産目標の下方修正、ハイブリッド自動車(HEV)の増産といった動きがある。
LiB主要四部材の世界市場は再度、成長の踊り場に差し掛かっている。中国では、国内でEV、LiB、LiB部材の各市場が成長した後、海外への拡販で市場成長を維持する計画だった。しかし、各国の状況を踏まえると、2024年以降は中国を中心とした過剰な設備投資、供給過剰状況を招くファクターは従来より減ると予想している。
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