見積もり時間をゼロに 部品の納期と金額を即時算定するミスミの新システム製造ITニュース(2/2 ページ)

» 2024年04月16日 10時00分 公開
[池谷翼MONOist]
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「EC2.0」を目指して

 製造業の購買調達部門は以前から、生産性向上を阻む、いわば構造的な課題に悩まされていた。購買調達業務では、BOM(部品表)などを基に、各部品について数十から数百社のサプライヤーに在庫や納期を問い合わせる必要がある。加えて、社内の営業部門や設計部門、製造部門などからコストダウンや設計上の制約条件に基づく要求を受けることも少なくない。

購買調達業務が直面していた課題 購買調達業務が直面していた課題[クリックして拡大] 出所:ミスミグループ本社

 さらに納入遅延や見積もり調整が必要であれば、都度対応しなければならない。1〜2週間という限られた時間でこれらの業務を行い、さらに1つ問題が生じると他のプロセスの見直しも必要になり、その対応も必要になる。こうした悪循環が、業務の生産性を低下させる課題として存在していた。

 これらの課題の原因として、木戸氏は「市場の在庫数が可視化されていないことに課題がある」と指摘する。サプライヤーごとの在庫数が分からないため、購買担当者は個別に部品を探し、見積回答次第では調整の手間が発生することになるという。木戸氏は、メーカーや卸、販売代理店からなる流通構造に問題の根本はあるとしつつ「どのプレイヤーも上流や下流との競合の回避や、資金力の問題から、抜本的な解決策を実行できなかった」と説明する。

課題の根本原因は「市場の在庫数が可視化されていないこと」 課題の根本原因は「市場の在庫数が可視化されていないこと」[クリックして拡大] 出所:ミスミグループ本社

 これに対して、リアルタイムでの在庫可視化によって問題の解決を目指すのが今回のD-JITということになる。現時点でミスミはD-JITを「ミスミのECサイトにおける数量対応力を向上させるサービスの1つ」(木戸氏)と位置付けている。製造業の生産管理システムや購買システムと連携させるシステムのような形で展開していくかなどは、今後検討するとしている。

 木戸氏は「ECサイトのユーザー視点で見ると、購買調達業務におけるプロセス自体はこれまでと変わらないのに、 今まで問い合わせしていた業務が一切なくなる。単なるECの物販ではなく、使用することで企業の生産性を向上させる『EC2.0』を目指していきたい」と展望を語った。

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