時間を創出し価値を最大化するミスミのデジタルマニュファクチャリング(前編)スマート工場最前線(1/2 ページ)

ミスミグループ本社は「meviy Factory Day」を開き、AI(人工知能)を活用した機械部品調達向けプラットフォーム「meviy」を支える「meviyデジタルマニュファクチュアリングシステム」について紹介した。本稿では前編としてミスミによる調達領域への革新について紹介する。

» 2024年02月19日 08時00分 公開
[長沢正博MONOist]

 ミスミグループ本社(以下、ミスミ)は2024年1月26日、グループ会社である駿河生産プラットフォーム 清水工場(静岡市清水区)において「meviy Factory Day」を開き、AI(人工知能)を活用した機械部品調達向けプラットフォーム「meviy(メビー)」を支える「meviyデジタルマニュファクチュアリングシステム」について紹介した。

 本稿では前編として、ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長 吉田光伸氏の講演や登壇したユーザー企業の設計者のコメントを基に、ミスミによる調達領域への革新について紹介する。後編では、駿河生産プラットフォーム 代表取締役社長 遠矢工氏の講演などを基にミスミのモノづくりについて紹介する。

膨大な商品ラインアップはまさに製造業のAmazon

 1963年に創業したミスミは電子機器、ベアリングの販売からスタートし、その後、プレス金型用の部品の販売を始めた。そして、1977年に業界に先駆けてプレス金型用部品のカタログ販売を開始した。

 まだ注文のたびにFAXで図面を送り、見積もりが行われていた当時、カタログから形状や寸法を指定するだけで注文でき、価格と納期も明記されているシステムは画期的だった。また、海外の工場で途中まで加工した“半製品”を大量に生産し、それを仕上げを行う工場にストックしておき、注文が入ると仕上げ加工をして出荷する体制を構築した。これによって低コストと短納期を実現した。

3000万点以上のラインアップでユーザーは32万社に[クリックで拡大]出所:ミスミ
ミスミグループ本社の吉田氏[クリックで拡大]

 ミスミは現在も、最終製品に組み込まれるような直接材ではなく、それらの製造装置に組み込まれる機械部品や金型部品など、“生産間接材”を主な領域としている。3000万点を超える商品と800亥(がい、兆の1億倍)のバリエーションを取りそろえており、グローバルでユーザーは32万社に上る。

 吉田氏は「分かりやすく言うと製造業のAmazonであり、世界最大級の品ぞろえでモノづくりに必要なものはほぼ何でもそろう。われわれの部品が届かないとモノづくりが進まないというような、社会インフラとしての矜持(きょうじ)を持って商品の生産、開発を行っている」と語る。

生産間接材がミスミの事業領域[クリックで拡大]出所:ミスミ

 製造業は日本のGDPの20%を占め、いまだ日本企業が高い世界シェアを持つ製品も多いが、日本は少子高齢化の進展で生産年齢人口が減り続けている。さらに、残業規制を含む働き方の変化によって就業時間も減っている。

「製造業においては戦い方のパラダイムシフトが生き残りの要件になってくる。これまでの量を前提とした戦い方から、少ない時間をいかにレバレッジし、最大のアウトプットを出していくかが重要となる。時間に対しての価値が相対的に高まっている」(吉田氏)

相対的に高まる時間の価値[クリックで拡大]出所:ミスミ

 生産性を高めるために必要となるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。吉田氏は設計から調達、製造、販売までのバリューチェーンの中で、ボトルネックとなっていたのが調達だと指摘する。設計では3D CADなどのソフトウェア、製造ではロボットなどを活用した自動化、販売でもオンラインの活用が進み、デジタル化による生産性の向上は進んでいる。

 一方で調達においては、「われわれは数年前に製造業向けの大規模なアンケートを行ったが、FAXの利用率が98%だった。設計から調達、製造、販売まで一気通貫でデジタル化できれば生産性はより向上するが、調達で一度アナログに落ちてしまう。ここが全体の生産性向上のボトルネックになっている」(吉田氏)。

製造業のDXを阻む構造的課題[クリックで拡大]出所:ミスミ
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