最近では、技術革新の進展が早いため、外注先においても工場の近代化を急速に進めている所が多くあります。また、一般的な調査項目としては次のものが挙げられます。
取引先の経営や業務評価を行う場合は、あらかじめ以下の体制を決めておくことで評価をスムーズに進められます。
資材部門(調達部門)もしくは製造部門が中心となって、設計部、品質保証部、生産技術部、技術部などの部長レベルまたは相当職位の人を人選してメンバーを決定します。
評価項目ごとの100点法など、なるべく定量的な評価基準を設定して評価レベルの平準化をあらかじめ図っておくことが大切です。
特に理由がない限り年度末(12月または3月など)や半期ごとに実施するのが一般的です。評価結果を公表し、同時に表彰式や改善発表会、講演会なども行って取引先の成長を促すということも多く行われています。
取引先と互いの成長を図っていくために、双方の評価も併せて行うと効果的です。
取引先の評価基準の例を表2に示しておきました。これを参考にして、自社の事情に合わせて項目の追加、削除を行って新たな書式を作成されることをお勧めします。
また、表2の(7)項の「財務の状況」については、一般的に次の項目の分析と評価をして、その結果に基づいて改善諸施策の立案を行います。
評価項目 | 評価基準 | 評価のポイント |
---|---|---|
(1)ISOの満足度 | 日常購入品目の品質結果 | 要求仕様に対する検収時での評価 |
(2)ISOの管理状況 | 日常の取引先の品質管理システム全般 | 1.組織体制 2.納期/品質などの改善実施状況 3.労務・安全・環境の管理状況 |
(3)購入価格 | 基準価格と実際価格との差(価格低減率) | (基準単価−実際単価)÷基準単価×100 |
(4)納期の順守 | 引き受け納期の順守率 | 1.{検収件数−(遅延件数+早期納入件数)}/検収件数×100 2.受注〜納入期間のリードタイムの短縮活動状況 |
(5)生産技術の水準 | 購入品目に対する取引先の生産技術水準、品質保証水準 | 1.製造・検査の設備保有状況 2.適切な品質管理体制と運用状況 |
(6)生産達成への協力度 | 日常的な協力の度合い | 1.品質・価格・納期に対する協力度合 2.市場調査/VE(Value Engineering:価値工学)/資材調達率の向上策などの総合的な協力度 |
(7)財務の状況 | 日常的な経営活動および経営数値の分析 | 財務状態の収益性、安全性、効率性、効率性、成長性などの分析 |
(8)経営者の事業への取り組み方 | 経営者の信念や意欲、計画性など | 1.社会的評価 2.事業計画の能力 3.自己啓発、心身の健康度、後継者育成状況など |
(9)VEの評価 | 年間のVE活動に対する貢献度 | 1.VE提案件数 2.VE提案の採用件数、効果金額、波及効果 3.アイデアの新規性(特許件数) |
(10)納入品の品質状況 | 日常の受入検査の実績や不良対策の状況、品質向上管理システムの水準 | 1.受入品の不良率 2.クレーム件数 3.協力度 4.品質水準の難易度 |
(11)総合評価 | 経営理念、企業活力度、従業員の資質/能力など | 1.アライアンスパートナーとしての適合性 2.外販能力(コスト、技術力など) |
表2 外注先評価基準の例 |
昨今の技術革新や機械設備の高精度化、管理水準の発展には目覚ましいものがあります。しかしながら、最近では少なくなってきているとはいえ、一般的に外注先は発注元企業に比較すると小規模で、管理能力が弱く、人材が不足し、機械設備面でも劣勢の状況で経営を行っているところも多く見られます。その結果として、発注元企業と外注先の技術や管理レベルの格差は大きく開いているのが実情です。
そのため、発注元企業は自社の合理化を進めるとともに、依存度の高い外注先に対しては経営、財務、技術、管理などの面から指導育成を行って、レベルアップを図っていくことが必要です。この際、外注先の自主性を尊重し、双方が技術力や管理力を補完しながら、生産分業体制の中で連携を強めていくような考え方が重要となります。外注先の指導には、大きく分けて経営管理の指導と技術面の指導が挙げられます。その結果、真のアライアンスパートナーとしてお互いの事業を尊重しながら協力体制を築いて、事業の成長スピードを上げていくことが最も重要です。
必要に応じて外注先の診断を行い、問題点の抽出、改善案を提示して指導していきます。特に、組織や人事管理、経理面、広義の生産管理などの指導が重要な項目です。また、経営幹部や管理監督者の育成教育などもあります。
作業工程の設定方法や作業方法の指導、型治工具の貸与と使用方法の教育、検査方法の指導、機械設備の改善などの指導が該当します。また、動作研究、時間研究、品質管理などのIE(Industrial Engineering)の普及と推進を指導していきます。
こうした外注指導の方法としては、発注元企業や外注先で対象者をまとめて行う集合教育の方法や指導員が外注先を巡回する巡回指導、指導員が常駐する出向指導の方法もあります。
その他の方法として、主要な外注先を組織化して協力会や協同組合とし、発注元企業が方針の徹底や意思疎通を図っているケースもあります。協力会のような組織活動によって自主的な改善努力を推進し、側面から支援することは効果的であり、具体的な内容としては、以下の方法が挙げられます。
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外注化の判断が重要であることの例として、以下のような2つの例が実際にあったことを紹介しておきます。よくよく注意して外注化に関する判断を行ってください。
1つは、ある生産管理者が「社内に生産指示をしても完了指示日を無視しているかのごとく、一向に指示通りに完成さてくれない。遅延理由を問いただすとあれこれと言い訳ばかりでラチがあかない。その点、外注先は指示通りに完成させて納期を厳守してくれるので、管理が容易である」との理由で、担当製品の加工を手当たり次第に外注化していった事例です。この生産管理者の行動は本末転倒で、社内生産の遅延原因をキチンと明らかにして改善すべきだったのです。
もう1つは、生産計画者の事例です。内作と外作(外注)の賃率(労務費レート)を比較すると外注先に依頼した方が安くできるとの理由で、この人も手当たり次第に外注化していました。その結果、内作の操業率が100%を下回ってしまい、内作加工製品の原価が予定原価を上回って取り返しがつかないことになってしまいました。これは、生産管理者に対しての管理会計の教育不足の結果です。
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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