CHAdeMO規格、次の一手はどうするのか和田憲一郎の電動化新時代!(51)(3/3 ページ)

» 2024年04月10日 06時00分 公開
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電動自転車向けCHAdeMOの状況

和田氏 EPAC CHAdeMOについてはどのような状況か。

箱守氏 電動アシスト自転車「EPAC」は日米欧の中で、特に欧州で人気が高い。このような電動アシスト自転車やスポーツバイクなどを対象として、多くの企業と協力して、新たな充電規格EPAC CHAdeMOを2022年に公表した。CHAdeMO協議会としては、多くのEPACユーザーに共用充電器を活用して充電することで、安全安心な充電サービスを提供できるよう目指している。

電動アシスト自転車(EPAC)とは[クリックで拡大] 出所:CHAdeMO協議会
世界にひろがるEPACマーケット[クリックで拡大] 出所:CHAdeMO協議会
CHAdeMO EPAC充電規格の目指す姿[クリックで拡大] 出所:CHAdeMO協議会

CHAdeMO規格の急速充電器の使い勝手について

和田氏 CHAdeMO協議会ではCHAdeMOの規格を決めているが、急速充電器の使い方は各急速充電器メーカーが決めており、各社バラバラでユーザーにとっては使い勝手があまり良くないと思われる。CHAdeMO協議会は規格を決める団体であるが、今後EVをさらに普及させ、多くの方々に使用していただくならば、急速充電器メーカーや設置企業などと連携して、ピクトグラムなどユーザーフレンドリーな表示や使い勝手のガイドラインを策定することはどうか。

荒井氏 ご指摘いただいた件については、ChaoJiの広報活動なども含めて、関係者とどのように対応するか検討していきたい。

取材を終えて

 冒頭、HEVの話題が多くなってきたことに触れた。一方、欧米でEVは成長が鈍化しているとの情報もある中、BYDは2024年2月、中国で「ガソリン車よりも安い電気自動車」をキャッチフレーズに低価格戦略を打ち出した。その結果、テスラをはじめ他の自動車メーカーも大幅な値下げを実施した。2024年は「EVは踊り場」と予想されていたものの、一気に再拡大する様相を見せてきた。

 このような中、CHAdeMO協議会の事務局メンバーに取材したことで気になったことがある。1つは、広報戦略の不足である。確かにCHAdeMO協議会は充電規格を取り決める団体であるが、どちらかといえば技術確立に重点を置いており、自らもしくは共同開発した規格をどのようにアピールし、広げていくかの広報戦略が不足しているように見受けた。せっかく新しい規格を作っても、多くの人に使ってもらえなければ意味がなくなってしまう。

 もう1つは使い勝手に関する懸念である。急速充電規格を制定し、実際の商品化は各急速充電器メーカーに任せていただけでは、使い勝手がばらばらとなる。EVに関して深い知識をもつユーザーであれば問題ないが、今後、多くの人々が利用するためにはユーザーフレンドリーな視点が重要となる。

 EVシフトが踊り場から再拡大の様相を見せている今だからこそ、急速充電の規格団体という枠組みを一歩踏み出し、業界のみならず一般の方々にも向けて、急速充電に関する普及活動を展開していただくことを期待したい。

→連載「和田憲一郎の電動化新時代!」バックナンバー

筆者紹介

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和田憲一郎(わだ けんいちろう)

三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。



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