SDVによる変革が進むモビリティ社会において、「位置情報」は人々の移動にどのような価値をもたらすのか。デジタル地図からグローバルなロケーションのプラットフォーマーへと進化を遂げたHERE Technologiesの日本法人トップを務める枝隆志氏に話を聞いた。
自動車業界全体がハードウェア中心からSDV(ソフトウェアデファインドビークル)へと開発の主軸を移す中で、地図データの使われ方も変革の最中にある。
HERE Technologiesは(以下、HERE)グローバルで約40年の歴史を持ち、日本法人のHERE Japanも1996年の創業から30周年の節目を迎えた。同社はかつて車載カーナビゲーション向け地図データを提供する企業として知られていたが、高精度なデータを提供する独自の仕組みを構築し、モビリティ全体を支えるロケーション関連のデータテクノロジープラットフォーム企業へと進化を遂げている。さらに、この技術基盤の進化は四輪車にとどまらず、ここ10年ほどで二輪車向けソリューションへの展開という新たな柱へも波及している。
HERE Japan代表取締役社長の枝隆志氏へのインタビューを通じ、同社のプラットフォーム企業としての歩みと、二輪向けナビゲーション技術の最前線と今後の展望について紹介する。
HEREはかつて、電子地図データをパッケージ化して提供するビジネスを中心に据えていた。しかし、スマートフォンの普及と通信環境の進化を契機に、事業モデルは大きな転換期を迎えた。
枝氏はナビゲーションサービスの変遷について「かつての静的なルート案内から、リアルタイムの交通情報を加味した動的な支援へと変わり、2010年代に入るとプラットフォーム化への移行が本格化した。車載器側にデータを固定するのではなく、双方向通信の大容量化を背景に、プラットフォーム側に常に最新の地図を配置する形へと進化した」と振り返る。
現在、HEREは地図データを提供するだけにとどまらず、AI(人工知能)などの技術を取り入れつつ包括的なプラットフォームプロバイダーとしての役割を担う体制を構築している。枝氏は「時代とともに提供する技術やソリューションの形態は大きく変化したが、常にロケーションサービス企業の先頭を走ってきた点と、ベースとなる地図データを自社で保有しているという根本的な強みは変わっていない」と語る。
現在のHEREは、同社の位置情報プラットフォームに接続する世界の4500万台以上の自動車から得られるプローブデータや月間800億件のAPIコール、空間データ、リアルタイムの交通情報などを、独自のエンドツーエンドプラットフォーム上で統合し、位置情報テクノロジーとして提供している。これらの技術は地図サービスにとどまらず、自動車メーカーやティア1サプライヤーが自社の製品開発に組み込んだり、各種アプリケーションを構築したりするためのB2B向けデータプラットフォームとして活用されている。
特に顧客からのデータフィードバックは、プラットフォームの進化において大きな役割を果たしているという。「車両から受け取った情報を、AIや機械学習を駆使して自社の地図メンテナンスプラットフォームに反映させ、更新を自動化している。多くの顧客から膨大なデータが集まり、それによってさらに精度が向上するという『弾み車』のような好循環が生まれている」。
日本市場においては、三菱商事、NTT、パイオニアといった日本企業から出資や協賛の形で参画を受けており、枝氏は「日本市場に適合しながらグローバル展開を見据えるという当社のビジョンに賛同いただくことで、力強いパートナーシップを築くことができている」と語った。
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