二次元問題とし、平面応力状態、つまり厚さ方向の応力がゼロの状態の三角形要素の要素剛性マトリクスを使って、各節点の変位を求める手順を説明しましょう。板厚が単位長さ(1[m]のことです)の板に荷重が作用し、変位した状態を図3に示します。
(xi,yi)、(xj,yj)、(xk,yk)は節点座標で、変位ベクトルと荷重ベクトルは次式で定義します。
剛性マトリクス[k]を次式で表現します。剛性マトリクスの各要素は材料のヤング率、ポアソン比と節点座標から求まりますが、これについては次回説明します。
荷重と変位の関係は次式で表されます。
式20、式21は、6個の式からなる連立方程式とお考えください。
では、全体剛性マトリクスを作りましょう。図4に示すような3つの要素から構成される構造物をモデルにして説明します。要素番号は丸数字①②③で書くのがお約束です。表1に節点番号と要素番号の関係を示します。
i節点 | j節点 | k節点 | |
---|---|---|---|
要素① | 1 | 2 | 3 |
要素② | 2 | 4 | 3 |
要素③ | 3 | 4 | 5 |
表1 節点番号と要素番号の関係 |
節点1はx方向変位が拘束され、節点2はx方向とy方向の変位が拘束されています。そして、節点5にy方向の外力Wが作用しているとします。
要素①の荷重と変位の関係をマトリクス形式と連立方程式で表しましょう。
続いて、要素②の荷重と変位の関係もマトリクス形式と連立方程式で表しましょう。
要素①と要素②は節点2と節点3を共有しています。ということは、式22-3と式23-1を足し算できます。次式となります。
分かりづらくなったのでマトリクス表示しましょう。まず、式20を拡張して大きな器を作ります。
式22-3と式23-1を足し算して式24を作ったということは、マトリクス表示では以下となります。
では、式22-4と式23-2を足算、式22-5と式23-5を足算、式22-6と式23-6を足算して、式22-3と式23-4とはゼロに加算しましょう。以下となります。
要素②と要素③は、節点3と節点4を共有しています。同様の操作をすると以下のような10行10列の剛性マトリクスと、10行の変位ベクトルの積が荷重ベクトルとなるマトリクス表示の連立方程式が出来上がります。
式28で全体剛性マトリクスができました。少し疲れましたね。今回はこの辺にしておきましょう。 (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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